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倫理(第1日程) 

 形式面では試行調査よりもセンター試験に近く、冒険的な問題は少なかった。ただし内容面では読解要素が大幅に増加し、文章も高校生目線のものが多くなった。

―概評―

新形式を意識し工夫を凝らした設問もあったが、形式面では従来型のものが多かった。内容面ではより高校生目線となり、日頃の学習を意識させるような会話文が目立った。全体としては読解要素が多く、受験生にとっては解きにくかっただろう。

―センター試験・試行調査との相違点―

センター試験的な正誤判定問題が残る一方、新形式を意識した読解問題もみられ、受験生の負担は増加したとみられる。2018年度の試行調査と比べて、形式面では踏襲しているものもあったが、全く出なかったものもあった。

【大問数・設問数・解答数】

4

32

33

【問題量】

原典資料が9、図版はグラフ1つを含んで4つ収録されていた。会話文も多く、センター試験よりは情報の処理量が格段に増えた。

【出題分野・出題内容】

第1問(東西源流思想)、第2問(日本思想)、第3問(西洋近現代思想)、第4問(現代社会・青年期・心理学など)と、問題編成に変化がみられた。

特に第3問や第4問で、高校生という立場で、「戦争」と「良心」をルター、エリクソン、ルソーなどの資料から考えさせ、倫理的意識の形成を促すような問題が散見された。

グラフ問題では例年、意識調査のアンケート結果から考察させる問題が多かったが、実験の手順と結果などを踏まえた出題で、従来よりも踏み込んだ思考力が試された。

小林秀雄、丸山真男、吉本隆明、南方熊楠、ベンヤミン、ハンス・ヨナスなど、やや細かい思想家が取り扱われることが増えた。また、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」が題材として取り扱われた。

【出題形式】

試行調査で出題されたような、複数選択・任意選択などを含んだ複雑な形式の問題は出ず、形式面では保守的であった。

―難易度(全体)―

昨年度のセンター試験と比べて難易度は同程度。設問数は減ったものの読解量は増加し、時間的余裕はなかったとみられる。試行調査(2018年度)と比べると難易度は易化。

―設問別分析―

第1問

・小問Ⅰ 「恥」について(東西源流思想・その1) 難易度:標準

・小問Ⅱ 「恥」について(東西源流思想・その2) 難易度:標準

「恥」をめぐる会話を題材に源流思想の分野から出題された。問1ではやや細かい「スンナ派」に関する出題。問2はパウロに関する空欄補充問題。問3は頻出のヘレニズムに関する出題。問4は会話文と資料読解問題で、引用は上座部仏教の注釈者ブッダゴーサの『アッタサーリニー』から。問5、問6は読解問題で、問6は「荘子」より引用。問7は、イスラーム教における集金などが題材。問8は資料読解問題で、引用はプラトンの「ソクラテスの弁明」とキケロの「友情について」。一問に短い二つの資料文があるのは新傾向の一つといえる。

第2問

・小問Ⅰ 日本における時間の捉え方と人生観・世界観(古代から中世) 難易度:やや易

・小問Ⅱ 日本における時間の捉え方と人生観・世界観(江戸時代) 難易度:標準

・小問Ⅲ 日本における時間の捉え方と人生観・世界観(近現代) 難易度:標準

同じテーマについて時代ごとに出題。問1はヘシオドスの「神統記」と「古事記」の共通点を答える問題で、「古事記」の概要を押さえていれば問題なく解ける易しい問題。問2は図版および資料の読み取りと知識の両方を使って答え、難易度は標準的。問3、問4は空欄補充問題で、やや易しい知識問題。問5は江戸時代の町人思想に関する正誤の組み合わせ問題。(3)では図版と会話文が登場するも、その内容は問6、問7にさほど連動しておらず、知識問題。問8は資料読解問題で、文章から受ける印象の割に易しい問題。引用は高村光太郎「永遠の感覚」から。

第3問

・西洋近現代思想における「良心」のあり方 難易度:標準

リード文の形式や分量はセンター試験の踏襲であった。問1は資料読解問題で引用はエリクソンの「青年ルター」から。問2はデカルトの「高邁の精神」について。問3は資料読解問題で引用はルソー「エミール」から。問4はキルケゴールの「実存の三段階」が題材。問5はマルクス、エンゲルスとオーウェンらについて表面的な知識が問われた。問6はフッサールの現象学について。問7は吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」といじめに関する読解問題。問8は冒頭のリード文を踏まえた上で、新たな会話文を読んで答える問題。

第4問

・歴史の捉え方(心理学、現代倫理) 難易度:標準

「歴史の捉え方」をめぐる出題。問1はリオタールやハンス・ヨナスなど細かい出題。問2はユングやシュプランガーに関する知識問題。問3はマスメディアに関する考察で有名なリップマンが題材。問4はフロイトに関する空欄補充問題。問5はバリアフリーの実例に関する出題。問6は動物実験を題材にした複合的な問題。問7は、従来の傾向と異なり「実験の手順と結果」が題材。易しいが詳細の把握に時間がかかる。問8(1)はベンヤミンの「歴史の概念について」を題材にマルクス、ヘーゲルについて問われた。(2)では(1)及びリード文の会話を踏まえた空欄補充問題。(代々木ゼミナール提供)