[PR]

 静岡県東伊豆町が故障続きで停止した町営風力発電所の後始末に頭を悩ませている。民間の再生可能エネルギー発電会社に現設備の撤去も含めて事業の引き継ぎを打診。近く回答がある見通しだが、新事業では風車の高さがこれまでの倍になるなど課題もある。

 町からの依頼で事業化を検討しているのはGPSSホールディングス(東京都)。全国各地で太陽光や小水力、風力などの発電を手がけている新興企業だ。同社が町に提出した事業性評価書などによると、現在ある高さ60メートルの風車3基を解体撤去。その跡地に高さ120メートルの風車3基を建設する。新規風車による売電収入で撤去費用も賄う計画だ。現状とほとんど変化がないとする騒音予測調査結果も併せて提出された。

 町内には3カ所に風力発電施設がある。町営発電所は町中心部に近く、数百メートルの距離に動物園や保育園もある。これまで騒音や低周波、景観への影響などについて苦情はほとんどなかったが、町議会の一部には、規模が倍になり、被害が顕在化するのではないかと懸念する声もある。

 同町熱川地区では風車をめぐって、近隣の別荘地の住民が低周波による健康被害を訴えたことがある。藤井広明町議は「示されたのは6~7メートルの平均風速時の音量だけ。問題が起きてからでは遅い」と指摘する。

 町は、環境省の風力発電の指針が「低周波については健康影響との明らかな関連を示す知見は確認されない」としていることから、問題にしない立場だ。

 G社が事業化の条件として地上権の設定と風車運営のために設立する会社への町の出資を求めていることも論点になりそうだ。地上権は、地主の承諾なしで工作物(風車)を売買できる権利とされる。一方、出資には町議会の議決が必要だ。町は「出資は少額で、運営には一切かかわらない」と説明するが、「住民とトラブルが生じた場合、町が矢面に立たざるをえなくなる」との声もある。

 町営発電所をめぐっては昨年、予算が成立する前に修繕工事をしたとして、町議会が太田長八町長の辞職勧告決議をした経緯もある。町議会には「G社から詳細な計画を聞かないと賛否は決められない」との意見が多いという。

 町営発電所が建設されたのは2003年。当時を知る森田七徳・企画調整課長によると、東京電力の勧めで取り組んだという。風力発電の適地を探していた東電が東伊豆町で風況調査をしたところ好結果が出た。役場内には反対意見もあったが、「財政にプラス」と建設を決断したという。

 総事業費は5億円。ほぼ半分が補助金で、残りを町の借金で賄った。最初の数年は順調で、撤去に備えた基金も順調に積み上がった。予想外だったのは、落雷などによる故障が頻発したことだ。大規模な修繕が必要となり、7年目には最初の赤字を出した。

 その後も不調が続き、5年前に3号機、3年前に2号機が完全に停止。1号機も昨年、停止し、すべて止まった。停止後も維持管理費用(年間約1千万円)がかかり続けている。

 収支決算は昨年3月末時点で、基金残高約600万円。環境教育などのために一般会計に繰り出したのが累計で5千万円。借金は全額返済し終わったが、1億~2億円と見積もられる撤去費用にはほど遠い。町が民間企業による引き継ぎにこだわるのはこのためだ。

 発電コストが比較的低い風力発電は、温暖化対策の有効な手段とされる。経産省によると2000年以降、国内でも導入件数が急速に増えている。東伊豆町のような自治体発電所が先導的役割を果たしたとの評価もある。町内では小学生への独自の環境教育も続けられている。

 一方で、近年は経営に苦しんできた。森田課長は「故障の修理一つとっても、専門家でない職員が業者と交渉するには時間もかかり、稼働率が下がった。役場の仕事としては限界があった」と話す。

 建設当時、町議としてかかわった太田町長は「バラ色の計画を示されて飛びついた。自然相手のことは想定外も考えないといけないというのが教訓。ただ、自治体が財源を稼ごうという試みはあってもいい」と話している。(石原幸宗)

関連ニュース