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 政府が米軍の訓練移転と自衛隊の基地整備を計画する無人島・馬毛島を抱える鹿児島県西之表市長選が24日、告示される。計画への賛否を争点に現職と新顔の一騎打ちが見込まれる。人口減が続く離島振興のあり方とも絡んで主張は真っ向から対立している。31日に投開票され、結果は計画に影響を与える可能性もある。

 鉄砲伝来の地、種子島の北部にある西之表市。その玄関口の港近くに立つ碑には、「遣隋遣唐使の昔から南西諸島屈指の要港で文物盛んに往来し今日の賑(にぎ)やかな港町となった」とある。

 だが、現在の港周辺の商店街はシャッターが目立つ。市の人口は1959年の約3万4千人をピークに約1万5千人まで減少。進学や就職の受け皿が少ない離島の問題も重なり、若者の流出が続いている。

 種子島の西12キロにある馬毛島への米空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)の移転計画が浮上したのは2007年。日米両政府は11年に島を移転候補地とすることに合意し、19年11月に島の大半を所有する開発会社と国の売買交渉がまとまった。

 20年には関連する自衛隊基地の配置案や、年間20日のFCLPに加えて130日に上る自衛隊機の訓練案が公表され、同年末には整備に向けた海上ボーリング調査も始まった。

 「馬毛島を市民の手に取り戻す」。再選を目指す現職の八板俊輔氏(67)は計画への反対を訴える。前回の選挙もFCLP反対を唱え、初当選した。その後は「市民が賛否を決める情報を積み重ねる時期」として立場を明言しなかったが、計画が具体化すると昨年秋に「不同意」を表明した。

 昨年11月に岸信夫防衛相に手渡した「所見」では、騒音被害などへの懸念に加え、「基地に頼る地域発展は他の資源利用を妨げ、引き返せなくなる」と反対理由を記した。市には訓練移転や基地建設を止める法令上の権限はないというが、防衛省は計画実施に「地元の理解が重要」と言及しており、「諦めずに反対を訴える。賛成派の市長になれば計画は淡々と進んでしまう」と危機感をにじませる。

 計画を許容する立場で立候補を予定するのが、新顔の福井清信氏(71)だ。市商工会長を務め、港に近い商店街で長年クリーニング店を営む。「衰退する一途の市の現状を打破したい」と訴え、活性化の起爆剤として150~200人とされる自衛隊員駐留や基地建設による特需、米軍訓練と基地設置に伴う交付金に期待する。

 福井氏も昨年12月に防衛省を訪れ、かつて訓練移転を受け入れれば「10年で250億円」と試算された米軍再編交付金の増額や、追加支援の検討を求める要望書を提出した。国による土地買収が進んだ現状から「島がほぼ国有地になり、市が『賛否』を言う時期は過ぎた。国と交渉に入るべきだ」としている。

 6人が立候補し、再選挙にもつれ込んだ前回は業界団体の多くが自主投票だったが、今回は商工、建設、漁業など主要な団体はそろって福井氏を推し、自民党県連も推薦を出した。「基地誘致」を訴えて立候補する構えだった元市議が今月、出馬を断念したことも有利に働く。ただ、両陣営ともに馬毛島の計画への市民の賛否は「真っ二つに割れている」と見ており、選挙の行方は見通せない。(奥村智司)

FCLPと馬毛島をめぐる動き

1973年 米空母が横須賀基地に配備

 82年 岩国、三沢基地で実施していた米空母艦載機陸上離着陸訓練を厚木基地に移転

 93年 東京・硫黄島に暫定の訓練施設が完成

2007年 馬毛島への米空母艦載機陸上離着陸訓練移転案が浮上

 11年 日米合意で訓練の恒久的施設として馬毛島を候補地に

 17年 訓練移転が争点になった西之表市長選で反対を訴えた八板俊輔氏が再選挙で初当選

 19年 馬毛島の99%を所有する開発会社が160億円で島を防衛省に売却することで合意

 20年8月 防衛省が馬毛島全域を自衛隊基地とする施設配置案を公表

   10月 八板市長が計画への不同意を表明

   12月 防衛省が馬毛島沖でボーリング調査開始

 21年1月 西之表市長選