数学I・数学A、代ゼミ問題分析 大学入学共通テスト
数学I・数学A(第1日程)
共通テスト初年度から、難易度・分量とも試行調査に近い出題となった。試験時間内で解答し終えることは難しいのではないか。
―概評―
第1問〔1〕は、会話文が少しあるもののセンター試験と大差ない内容である。第2問〔2〕は、昨年度と同様にヒストグラムや散布図の読解がメインであるが、分量が多めである。第3問(3)以降は試行調査のように、「解決過程の振り返り」を要求するものである。第4問・第5問も誘導が少なめであるため、難しいと感じられるだろう。
―センター試験・試行調査との相違点―
第1問〔1〕を除いてセンター試験よりは試行調査に近い出題である一方、試行調査よりは会話文などの文章量が大幅に減り、証明の過程を問うような設問はなかった。
【大問数・設問数・解答数】
5
23
96
【問題量】
分量が多めであり、問題によっては設問にいたる前に状況を自分で整理する必要がある。個々の設問も、誘導が少なかったり一つひとつ丹念に調べる必要があったりと、質・量ともに重めの出題である。
【出題分野・出題内容】
第1問〔1〕は数と式からの出題であったが、この問題はセンター試験と同程度の難易度である。
第1問〔2〕は三角比の問題である。三平方の定理を念頭に、2つの正方形に挟まれた角に着目して解答したい。
第2問〔1〕は2次関数の問題であるが、設定を理解できれば設問そのものはそれほど難しくない。
第2問〔2〕はデータの分析からの出題だが、昨年同様計算は一切なく、データの読解が問われた。文章量が多いので注意が必要である。
第3問は確率の問題である。(3)以降が「解決過程の振り返り」を用いる形になっているので、この問題が試行調査に最も近い形の出題であろう。
第4問は整数の性質の問題である。(3)以降は余りによる分類を考える必要がある。最後の設問は3と5で割った余りをそれぞれ考えるが、解答するのが難しいだろう。
第5問は図形の性質の問題である。必要なものは角の二等分線の性質と方べきの定理程度であるが、誘導が少ないため、図形の種々の性質を適切に用いることができるかどうかが問われている。
【出題形式】
答を選択肢から選ぶ問題が第1問で8、第2問で8、第3問で2、第4問で1、第5問で1であったが、それ以外は数値を求めさせる問題である。
―難易度(全体)―
昨年のセンター試験と比べると、難しい。その理由として、出題形式の変更と、分量の多さの両方が挙げられる。2回の試行調査よりはやや易しいだろう。
―設問別分析―
第1問
・小問〔1〕 数と式 難易度:標準
・小問〔2〕 図形と計量 難易度:やや難
〔1〕は因数分解や2次方程式の解、分母の有理化、整数部分についてである。解が有理数になる正の整数cの個数についてはやや発展的な事項である。不等式を用いて値を絞った後、一つ一つ調べればよい。〔2〕は角度が鋭角、直角、鈍角のそれぞれの場合において、面積、外接円の半径に関する式の符号や大小関係を調べる問題である。どのような公式を用いればよいのか判断する力が求められている。
第2問
・小問〔1〕 2次関数 難易度:やや難
・小問〔2〕 データの分析 難易度:標準
〔1〕は陸上競技におけるタイムと2次関数を結びつけた応用問題である。読解力、思考力、計算力といった総合的な力が必要である。〔2〕は箱ひげ図、ヒストグラム、散布図に関する問題であり、特に難しい点はないだろう。ただ、「ひげの長さ」という用語が使われていることは珍しい。
第3問
・確率 難易度:標準
複数の箱のうちから一つを選んで、その箱からくじを引く問題。特筆すべき点として、条件付き確率の大小を、比を用いてうまく求めるという流れになっている。比を用いることに気づけないと計算量が多くなってしまう。
第4問
・整数の性質 難易度:やや難
さいころの目によって動点が円周上の定点を移動するという問題であり、1次不定方程式に結びついている。一見、確率の問題を連想するかもしれないが、確率とは関係ない問題設定になっている。後半部分では自力で1次不定方程式に結びつける応用力が必要である。最後の「最小回数の最大値」については一つ一つ計算するのではなく、消去法を用いるのが方法の一つである。完答するのは難しいだろう。
第5問
・図形の性質 難易度:やや難
角の二等分線の性質や方べきの定理などを用いて解いていく。しかし、複数の円が現れるため、図を何回か書き直すといった手間がかかる。そして、問題の流れに乗るための図形的考察力が必要である。そのため、見た目の分量に反して時間はかかるだろう。(代々木ゼミナール提供)