味の決め手は白ワイン 阿賀野のだししょうゆ「和院」

谷瞳兒
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 【新潟】だししょうゆとしては甘さ控えめ、後味すっきり。これが気に入って、私も一昨年から愛用している。味の決め手は白ワインだ。

 五頭山を望む阿賀野市笹岡。商店や民家が並ぶ雪深い町の蔵元「コトヨ醬油醸造元」が、だししょうゆ「和院」を製造している。1848年の創業以来、この場所でしょうゆをつくり続けてきた。

 工場で、まず目に入るのが大きな10個の杉おけだ。例年、寒さが一層厳しくなる1月ごろに仕込みを始め、約2年間、じっくりともろみの発酵を待つ。一般的なしょうゆの製造期間の約4倍もかかるのは、千葉や兵庫といった主要な産地と比べて気温が低く、発酵の進みが遅いから。ただ、時間をかけることで、より深みのある味わいに仕上がるという。

 室温調整や、おけを加熱する製法もあるというが、コトヨ醬油はよけいな手を加えない。原料の大豆と小麦がこうじ菌の酵素で分解され、うまみ成分のグルタミン酸やブドウ糖がじっくり引き出される。

 「新潟だからこその味が出せるんです」と同社の小林江利子専務(67)。先代豊次郎さんの長女で、「和院」の生みの親だ。

 東京農業大で醸造学を専攻し、実家に戻って豊次郎さんに弟子入り。初めて手がけたのが、だししょうゆだった。まず、かつお節や昆布でだしをとり、みりんを加えてみたが、甘すぎた。本来のしょうゆのうまみがそがれてしまう、と感じた。

 いろいろな工夫を試す中で、みりんを減らして入れてみたのがワイン。赤、ロゼと順番に合わせてみて、一番良いと感じたのが白だった。風味のくせが強すぎず、しょうゆの味を邪魔しない。山梨でワイナリーを営む大学時代の同級生からもらったワインで試作すると、想像以上の高評価。あちこちから「ぜひ売ってほしい」と言われ、商品化した。

 だししょうゆのうまみに加わったワインの風味。味のバランスが良く、煮炊きはもちろん、湯で薄めてめんつゆに、さらにコショウを加えてラーメンスープにもなる。酢と合わせればドレッシング、という万能ぶりで、顧客は県内外に広がっている。

 従業員5人の小さな蔵元。新型コロナの影響で、大口納入先だった飲食店からの注文が3カ月途絶えるなど、経営は大きな打撃を受けている。

 それでも、根強いファンは忘れていない。取材中にも近所の女性が蔵にやってきて、「和院」が入ったセットを買っていった。「もう、コトヨさんのじゃないと他のは使えないですよ」と言いながら。小林さんは「必要としてくれる人がいることは、本当にありがたいこと。しょうゆと一緒で、じっくりのんびりとやっていきます」と話した。(谷瞳兒)

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 〈だししょうゆ「和院」〉 1・8リットル、税込み1902円。コトヨ醬油醸造元(阿賀野市)の蔵元のほか、同社のインターネットサイトや、通販サイト「新潟直送計画」などで買える。問い合わせはコトヨ醬油醸造元(0250・62・2416)へ。「和院」のほかに、濃い口しょうゆの「笹神延喜」(税込み1404円)や「笹神喜昜(きあげ)」(同898円)も。