重厚に音を重ねていく「ウォール・オブ・サウンド」で知られ、ビートルズやジョン・レノンのアルバムをプロデュースした音楽プロデューサーのフィル・スペクターさんが16日、死去した。81歳だった。スペクターさんは米カリフォルニア州の刑務所に収監されており、州当局がホームページ上で発表した。死因は調査中だが、ニューヨーク・タイムズ紙は家族の話として、新型コロナウイルスによる合併症だったとしている。

 ニューヨーク出身。1963年にプロデュースを手がけたロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」がヒット。「音の魔術師」の異名を取り、多重録音の技術が未発達だった時代に、多くの楽器やコーラスを重ね合わせた華やかな音作りは、「ウォール・オブ・サウンド(音の壁)」と呼ばれた。

 70年には、ビートルズの最後の発表作品となった「レット・イット・ビー」のプロデュースを手がけたほか、ジョン・レノンのソロデビュー作「ジョンの魂」やジョージ・ハリソン「オール・シングス・マスト・パス」など歴史的作品を世に送り出した。

 自身のソロアルバム「クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター」(63年)は、クリスマスアルバムの最高傑作の一つに数えられる。

 後世に与えた影響は大きく、大瀧詠一や山下達郎、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンやブルース・スプリングスティーンなど、多くのミュージシャンがその影響を公言している。

 天才の名をほしいままにした一方で、奇行が多く、ロック界きっての変人として知られた。薬物におぼれ、80年代以降は音楽シーンから遠ざかった。2003年には、自宅で俳優のラナ・クラークソンさんを殺害した容疑で逮捕された。09年に禁錮19年の判決を受け、米カリフォルニア州の刑務所の薬物中毒治療施設に収監されていた。(定塚遼)