毒殺未遂被害のナバリヌイ氏、ロシアで拘束 帰国直後に

モスクワ=石橋亮介
【動画】毒殺未遂事件に遭ったロシアの反政権活動家、アレクセイ・ナバリヌイ氏が、帰国直後に空港内でロシア当局に拘束された
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 昨夏に毒殺未遂に遭ったロシアの反政権活動家、アレクセイ・ナバリヌイ氏が17日、療養先のドイツから帰国し、直後にモスクワの空港で拘束された。ロシアでは9月、政権が足場固めの場としたい下院選が予定され、拘束は長期化も予想される。反政権派や欧米諸国は反発を強めており、国内外で緊張がさらに高まるのは必至だ。

 「今日はこの5カ月間で最高の日だ。平常心で入国審査を通り、自宅に帰る」。ナバリヌイ氏は17日、到着したモスクワの空港内で、ベルリンからの飛行機に同乗してきた記者団を前に語った。「私に対する刑事告訴はでっち上げで、何も恐れていない」と述べ、妻のユリヤさんと共に入国審査に向かい、直後に拘束された。

 拘束の理由についてロシア司法当局は、2014年にナバリヌイ氏が受けた経済事件の禁錮3年半の有罪判決について、執行猶予期間中の出頭義務などを果たさなかったためだと説明。地元裁判所は18日、30日間の拘束を認めた。今後、執行猶予が取り消されれば、収監される見通しだ。

 さらに、ロシア当局は、ナバリヌイ氏が設立した「反汚職基金」への寄付金を流用したとする別の詐欺や名誉毀損(きそん)などの容疑でも訴追方針を示している。今後、これらの罪でも有罪となれば、拘束はさらに長期化する可能性がある。ナバリヌイ氏は同日、新たな動画メッセージを公開し、「私のためではなく、皆さん自身の未来のため、街に出てほしい」と街頭での抗議を呼びかけた。

 ナバリヌイ氏の拘束で、プーチン政権への非難の声が国内外で高まっている。

 米バイデン次期政権の大統領補佐官(国家安全保障担当)に指名されているサリバン氏は「ナバリヌイ氏に対するロシア政府の攻撃は、人権侵害であるだけでなく、声を聞いてほしいと願っているロシア国民への侮辱だ」と指摘。ポンペオ米国務長官も声明で、「ナバリヌイ氏の拘束は政権批判を黙らせる試みだ。自信ある指導者は、競合する声を恐れたり、政治的な対立相手に暴力を用いたり、不当に拘束したりはしない」と非難した。

 欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は、「司法の政治化は容認できない」と批判。欧州各国も相次いで非難声明を出し、即時の解放を求めた。

 一方、ロシアのラブロフ外相は18日の記者会見で、拘束はロシアの法律にのっとった判断だとし、欧米の批判は「(西欧社会が直面する)民主的な発展モデルの危機から注意をそらそうとしているだけだ」と反発した。

 暗殺未遂事件をめぐっては、プーチン政権の関与を指摘するEUと、否定するロシアが互いに制裁を発動し合うなど対立が深まっている。

 今秋に下院選を控え、プーチン政権は、国際世論も巻き込んだ反政権活動の活性化を警戒している。ナバリヌイ氏の拘束は、欧米の反発を招いてでも反政権派を抑えこむためとみられる。支持率が低迷するなか、選挙を前に焦る政権が、今後も反政権派への圧力を強める可能性がある。

 ナバリヌイ氏は意識が戻った直後の昨年9月、体調の回復後はロシアで反政権活動を続ける意向を表明していた。ナバリヌイ氏の帰国に際し、一部メディアは離陸前の機内から中継するなどし、ナバリヌイ氏や当局の動きを詳報。政権は、到着予定地だったモスクワ南部のブヌコボ空港に多数の警官隊を配置し、搭乗客など以外の空港ビルへの立ち入りを禁止した。空港前には数千人のナバリヌイ氏の支持者らが集結し、着陸直前に到着予定地がモスクワ北部のシェレメチェボ空港に変更された。ロシアメディアによると、機内では「技術的要因により空港が閉鎖された」などと説明があったという。

 ブヌコボ空港の前には、着陸地の変更が伝えられた後も多数の支持者が残り、零下20度以下の寒空の下、「ロシアに自由を」などと声をあげた。市民団体の集計によると、同空港では約60人が拘束されたという。(モスクワ=石橋亮介)