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 年の初めや4月は、新しい目標を立てて何かと新しいことを始めたくなるものです。ただ、やることが増えすぎたり目標が高すぎたりして、自分を苦しめてしまった経験はないでしょうか。無理なく計画を進めるためにどうすればいいのでしょうか。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

「こんなに忙しくなるはずでは」を防ぐには

 スケジュール帳の多くが1月と4月はじまりですね。年の始まりと年度の始まりだからでしょう。この時期には多くの人が「今年こそは!」「春からは!」と何か新しい目標を立てたりして、新しいことを始めますね。それを見越したように、フィットネスクラブでは「新春からいい汗かこう!ホットヨガ」みたいなキャッチフレーズで様々なキャンペーンが展開されていますね。今回のコラムでは、新年だからこそ、しておいた方がいい時間管理のコツをお伝えしたいと思います。

 私は時間管理グループレッスンという時間を味方につけるためのスキルを学ぶ会を毎週土曜日にオンラインで開催していますが、その中で多く寄せられる悩みの一つに、「この時期がこんなに忙しくなるはずでは!」という悲鳴があります。

 お勤めの方で、仕事の量を調整しにくい環境にいらっしゃる方もいますし、フリーランスで本来自分で仕事の量を調整できるはずだけど、そうもいかないという方もいらっしゃいます。しかし、もしかすると年の初めに、1年間を見通しておけば、事前に防ぐことができることも多いのかもしれません。

 さて、皆様も今こそ、この1年を見渡してみませんか。

自分が抱えているものをすべて書き出す

◆ステップ1:この1年に実施する予定のプロジェクト一覧と実施時期の書き出し

 まずは、2021年に抱えている仕事のプロジェクト、プライベートの用事を箇条書きにします。仕事のプロジェクトは、たとえば、「月末処理」のような定期的なもの、「春の新生活応援キャンペーン」などの季節性のもの、出張や報告書作成などでしょうか。

 プライベートな用事は、確定申告や家族の誕生日、親の介護や旅行の計画なども含みます。こうしてとにかく自分が抱えているものをすべて書き出すことが大事です。ぜーーーんぶ脳の中で覚えていようとせずに、すべて出して並べてみるのです。

 項目を出し終えたら、あまりに大きな単位の項目は、さらに細かい単位に分解して、やることリストにしていきます。1カ月から数カ月単位のかたまりに分解できるといいでしょう。

 最後に、それらをいつ実施するのかを書きます。ここでは、ADHDの主婦リョウさんの例を挙げます。

拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

視覚化で気づくこと

◆ステップ2:ガントチャートで視覚化

 ステップ1で作成した表を、図にして視覚化していきます。上記のイラストの右半分がそうです。縦軸がプロジェクト名、横軸は1月から12月になります。

 こんなふうに視覚化されると、実にいろんなことに気づけます。

 リョウさんの場合は、3月にリョウさんと娘、義父の誕生日が重なり、春休みのせいで平日にPTAの仕事が多く入り、また次年度の役員に引き継ぎをするため忙しくなることも予想できました。

 また、3月末には毎年4月の娘の新学期に向けて、ぞうきんや色鉛筆などの学用品を新調することも思い出しました。さらに年度末は毎年夫が忙しく、家事や育児を手伝ってもらえないこと。なのにリョウさんは毎年ひなまつりに、はりきってごちそうを用意して、それで体調を崩してしまうことが数年続いていました。

忙しい時期を乗り越える具体策

 リョウさんはこの3月の乗り越え方を考えてみました。

 秘訣(ひけつ)は四つです。「まとめる」「簡素化」「締め切りを延ばす」「協力者を増やす」です。

 リョウさんは、誕生日会は自分と娘をまとめて祝うことにしました。新学期に向けて用意する学用品は、だいたいいつも同じなので、ネット通販で買い物履歴が残るようにして入手しました。これで次からは注文が楽です。

 さらに、ひなまつりには、これまでちらしずしやハマグリのお吸い物を作ったりと、はりきっていたリョウさんですが、今年のひなまつりはひなあられとちらしずしはテイクアウトにして、お吸い物だけ手作りするにとどめました。誕生日会をひなまつりのお食事で祝うのもありかもしれません。

 みなさんはどのような発見がありましたか?

 「こんなにたくさんプロジェクトを抱え込んでいたんだ」「そりゃ、忙しいわけだ」などの発見があるかもしれません。

 「もう新しい仕事やプライベートで負担になることを入れるべきではない」とこれからの仕事や雑用の請負に気を付けるべきだという教訓を得られるかもしれません。

時間軸に収まっていない場合は……

 複数のプロジェクトがどう考えても時間軸に収まっていない場合には、「ほんとは私って何を優先したいんだっけ? 幸せってなんだっけ?」という自問自答をしてみるのもよいでしょう。

 取捨選択の基準を作ることはとても大事です。でも大事だけど、日々の生活に追われて、短期的な視点しか持つことができないと、なかなかわからなくなってしまうものです。

 ADHDの傾向を持つ人は、特に「あれもやりたい、これもやりたい」と次々に夢が広がり、しかもそれらに衝動的に飛びついて安請け合いしたり、見切り発車したりしてしまいがちです。年間計画をしっかり立てて、「時間軸におさまるものをやっていくぞ」と自分に誓いましょう。

 ぜひとも年の初めに、自分のこれからの1年をみつめてみましょう。

 ◇このコラムの著者である中島らの新刊「働く人のための時間管理ワークブック」(星和書店)が出ました。是非お読みください。https://www.amazon.co.jp/dp/4791110684/別ウインドウで開きます

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。