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 新型コロナウイルスの拡大をくい止める抑止力になるのか、人権侵害につながるのか――。政府は、入院を拒んだ感染者への懲役刑を盛り込んだ改正感染症法案をまとめた。18日に開会した通常国会で議論が本格化する。

「生命守るため、やむを得ない」

 15日に厚生労働省であった専門家による部会。同省の正林督章健康局長は、感染者の行動を例に挙げて罰則の必要性を説いた。

 「入院中に逃げ出したとか、自宅にいたいとか、入院で拘束されるのは嫌だというのは多々あった」

 それを許せば周囲の人にも被害が及ぶとし、罰金にとどまらず懲役という刑事罰を科す必要があるとした。ただし「逃亡」などの事例はどれだけあるのかは調べていないという。

 厚労省としては、宿泊・自宅療養を拒んだ人には罰則の前にいったん入院勧告をすることや、疫学調査をめぐる罰則対象に濃厚接触者は含めないとすることなどで、人権には一定の配慮をしたのだという。

 この部会で、ある自治体の保健行政の担当者は「感染拡大を食い止めるということで賛成する」と述べた。別の保健行政の専門家も、新型コロナに無関心な人が感染を広げる要因になっているとして、「何らかの抑止力が必要」と一定の理解を示した。

 出席した中野貴司・川崎医科大学総合医療センター小児科部長は取材に「患者さんの健康・生命を守るための『抑止力』としてやむをえないと考える」と話した。入院拒否の一部の患者が自宅などで重症化して救急搬送されたり、周囲に感染を広げたりした事例もあるからだという。

 慎重な意見もあったが、部会は罰則を盛り込んだ改正の方向性を了承した。

 罰則導入は、実際にさまざまな要請を出す知事たちがかねて求めていたことでもある。全国知事会で新型コロナ対策本部長代行を務める鳥取県の平井伸治知事は昨年11月、取材に対して「強制的な措置権などを一生懸命交渉するが、なかなか政府側は法律改正に至らない」と危機感を募らせていた。

 全国知事会は9日、感染症法の改正を求める国への提言をまとめ、入院勧告の順守義務や罰則規定の創設を訴えた。同日の会議で奈良県の荒井正吾知事は「宿泊施設に入るのを拒否する方がいる」として、「強制力を伴って言えるような感染症法の改正を」と求めた。

「過去の教訓、いかされていない」

 「罰則は人々に恐怖を植え付け、新たな差別や偏見を生む」。国立ハンセン病療養所「長島愛生園」(岡山県瀬戸内市)に入所する元患者の石田雅男さん(84)は心配する。

 10歳だった1946年、両親と引き離されて愛生園に収容された。床屋で隣に座った男性が自宅までついてきて、両親に息子の感染を告げた。取り締まりの担当者だった。

今回の法改正案は、感染拡大を食い止める効果に期待する声がある一方で、医療現場や憲法学者からは否定的な意見も出ています。詳しくは記事の後半で。地方議会での事例も紹介します。

 強制隔離を進めたらい予防法(…

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