第1回狙われた不動産会社ユニゾ 敵対的買収の標的に

有料会員記事

南日慶子、田中美保
[PR]

ハゲタカと戦った328日①

 新年になってもコロナ禍は深刻さを増している。緊急事態宣言もあって経済は厳しく、企業は生き残ろうと必死だ。こうした状況のなか、企業のM&A(合併・買収)がめだつ。家具大手のニトリホールディングスが、ホームセンター大手の島忠を「争奪戦」のすえ買収することになった。今年もM&Aは続くとみられるが、ぎりぎりの交渉が行われる現場の様子は表には出にくい。

 敵味方がめまぐるしく入れ替わり、敵の裏をかく応酬が続く――。「事実は小説よりも奇なり」と言うが、昨年大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」の世界のようなことが、現実の株式市場や企業を舞台に行われているのだ。

 そうした実情を知ることができる格好の舞台がある。中堅不動産会社のユニゾホールディングスだ。現在の経営陣は、8カ月前まで取締役にもなっていない現場の人たちだった。株式の上場をやめ、いまは社員たちが株主となっている。東京都中央区の本社ビルは売り、横浜市のビルに本社を移した。経営していたホテルやオフィスビルなど100近い物件を売り払った。半年で経営が様変わりしたユニゾ。こうなったきっかけは敵対的買収の標的になったことだった。

 “ハゲタカ”と恐れられる存在でもある外資系投資ファンドたちと戦い、傷つきながらも新しい経営体制を立ち上げた中堅不動産会社の328日間の軌跡を、複数の関係者の証言や資料をもとに追った。

 まずは、一昨年夏に時計の針を戻してみよう。

 東京株式市場が閉じるのは午後3時だ。2019年7月10日、その直前にニュースが飛び込んできた。大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)が中堅不動産会社の買収に乗り出すという情報だった。企業の株主総会シーズンが終わり、経済ニュースが夏枯れのころだけに記者たちは色めきたった。

 HISはこの日の夕方、東京・八重洲の会議室で会見を開いた。登場したのは創業者で会長兼社長として経営をリードする沢田秀雄(69)だ。

 買収の相手は中堅不動産会社のユニゾホールディングスだった。HISはユニゾの発行済み株式の45%を株式公開買い付け(TOB)すると発表した。

 買い付け条件は1株3100円。7月9日のユニゾ株の終値は1990円だから、1千円以上の上乗せがある。既存の株主から株を売ってもらうには十分な価格水準だろうと思われた。TOBが成功して目標の45%の株式を買うことができれば、買収総額は約427億円になる計算で、ちょっとした大型M&Aのニュースだった。

 会見場に集まった記者たちは沢田の発言に注目した。

■HIS創業者の突然の会見…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

2種類有料会員記事会員記事の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら