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 京都国立近代美術館(京都市左京区)で始まった建築の展覧会に合わせて、ユニークなおみやげが同館で売られている。京都・西陣にある大正時代の建物のデザインをもとにした、一口サイズの干菓子だ。作品の凹凸を緻密(ちみつ)に再現しており、地元のアートを目と舌で楽しむことができる。

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 この干菓子は「我石ゅ糖(がいしゅと)」。和三盆を使った3センチ四方の落雁(らくがん)で、踊り子のレリーフを型押しで表現している。4個入りで972円(税込み)。展覧会「分離派建築会100年 建築は芸術か?」のコラボ企画として、同館のミュージアムショップ(075・771・2629)で売られている。

 オリジナル作品は、大正10(1921)年に完成し、国の重要文化財に指定された上京区の「旧京都中央電話局西陣分局舎」(現・西陣産業創造會舘)の正面の壁を飾っている。薄い衣を着た女性が踊る姿をデザインした、95センチ四方のレリーフのパネルだ。

 同分局舎は、建築を「ガイスト・スピーレン」(ドイツ語で「精神的遊戯」の意味)と主張し、若くして亡くなった鹿児島県出身の岩元祿(ろく)が設計した。建築の芸術性を主張した「分離派」と呼ばれる大正時代の建築運動に影響を与えた建築家として知られている。

 このパネルを干菓子に変身させたのは、同分局舎から歩いて5分ほどの場所にある、京菓子店「塩芳軒(しおよしけん)」(上京区)。豊臣秀吉が築いた聚楽第(じゅらくだい)のあった辺りにあり、焼き菓子「聚楽」で知られる老舗だ。

 展覧会でパネルの復元品が展示されることに合わせて、同美術館側が依頼した。5代目店主の高家(たかや)啓太さん(47)は「それまで、近所ながら建物をじっくりと見たことがなかった。あらためて見に行くと、デザイン性のある建物の存在感に驚いた」と言う。

 問題は、レリーフの細かな凹凸を小さな干菓子でうまく表現できるか。形を誇張する手もあったが、老舗の腕前を見込まれたのだから、複雑な曲線や凹凸を正確に表現したかった。

 そこで、落雁作りで一般的な木型でなく、より精巧な樹脂の型を作った。口どけの良さと形崩れのしにくさのバランスを見極めるように、和三盆に混ぜる水分量や練り具合、型に入れた材料を押す力を職人としての勘を頼りに調節。約3カ月かけて、できあがった。

 「食べられるパネルに仕上がった。西陣に面白いものがあるんだなという気づきになれば」と高家さん。

 同美術館の特定研究員の本橋仁さん(34)は「同じ模様が並ぶ実物の姿が『落雁っぽい』という発想から始まった企画だった。布のひだの部分まで細かく表現していて、大きさもかわいい」と話す。(高井里佳子)

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