男性職員の育休、愛媛県は最下位 「取りやすい空気を」

照井琢見
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 愛媛県職員の男性の育児休業取得率が全都道府県の中で最下位だったことが、総務省の調査で分かった。なぜか。なにが壁なのか。担当職員と実際に育休を取った職員に聞いた。

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 昨年12月、総務省が2019年度の地方公務員の勤務状況に関する調査結果を公表した。それによると、男性の育休取得率は前年度比2・4ポイント増の8・0%となり、03年度以降で最高。都道府県職員のトップは鳥取県の26・1%で、愛媛県は1・5%だった。

 取得率は、19年度に新たに育児休業が可能となった職員数に占める取得者の割合。愛媛の場合、知事部局などで3・1%、県警は0・0%、県教委は1・7%だった。愛媛県人事課の梶村典久主幹(48)は「他の都道府県の実績が伸び、気がついたら置いていかれた」と話す。

 県が16年に定めた、女性活躍推進法などに基づく「特定事業主行動計画」に、「育児休業」の取得目標はない。「無給の育児休業は強制せずに、育児への参加を促すという考え方だった」と、梶村さんは説明する。

 代わりに県は、有給の「育児参加休暇(5日以内)」や「配偶者出産休暇(3日以内)」の取得を促した。19年度には男性職員の76%が取得している。梶村さんは「一定の成果は出たと思う」と話す。

 職員アンケートで育休を取得しない理由を尋ねたところ、業務が繁忙(48・9%)▽自分以外に育児をする人がいる(45・5%)▽周囲が取らない(31・6%)といった回答が多数を占めた。梶村さんは「育児休業は明らかに低い数字にとどまっている」として、「行動計画を見直し、育児休業の取得目標を設定する必要がある」と話す。

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 「迷うなら、育児休業は絶対取ったほうがいい」

 県オリパラ・マスターズ推進室主事の村上信介さん(30)は力を込める。昨年5月、育児休業を1カ月間取得した。

 一昨年8月に妻の真世さん(25)の妊娠が分かった。育休を取りたいと思ったが、同じ部署に経験者の男性はいなかった。ほかの部署の知人に「1週間は休めた」という話を聞いた。県庁全体で「6日以上の育児参加」を呼びかけていると聞いたこともあった。

 秋にあった上司との面談で、1週間ほど育休を取りたいと相談すると、上司からは「もっと長く取ったら?」と、1カ月の育児休業を提案された。

 真世さんの出産予定日は翌年の4月。信介さんが担当する東京五輪聖火リレーも同じ4月に予定されていた。真世さんは出産直後の1カ月を実家で過ごすことにし、信介さんは仕事が落ち着く5月に育児休業を取得すると決めた。「タイミングがよかったし、上司の一言が後押しになった」と信介さんは振り返る。

 長男の拓ちゃん(9カ月)が生まれた1カ月後、育休期間に入った。子どもにつきっきりの真世さんに代わり、食事は3食作り、家事をひと通りこなした。

 子どもは2時間おきに起き、泣き出す。泣く理由も分からず、それが一日中続いた。「毎日一緒に過ごして初めて、本当の大変さが分かった。夜泣きで妻がイライラするのも、今なら共感できる」

 真世さんも信介さんの変化を感じた。「私の実家に会いに来たときは、子どもを『かわいい』とだけ思っている感じ。温度差があった」。1カ月間、悩みを共有しながら過ごし、「初めて一緒に子育てをスタートできたと思う」。

 育休が明けるとき、信介さんは真世さんひとりに押しつけるような「申し訳なさ」を感じたという。働き方を変え、なるべく定時に帰るようにした。残業する日をあらかじめ決め、真世さんに知らせている。

 信介さんは「いま思えば1カ月も短かった。次があれば最低3カ月は取る」と話す。後輩の男性が育休取得を迷っていたら、背中を押すつもりだ。「経験者が少ないと、必要性が分からない人も多い。だからワーストになったのでは。育児休業を取りやすい空気を作りたい」(照井琢見)