河村克兵
青い丸の「あおくん」と黄色い丸の「きいろちゃん」が生き生きと動く絵本『あおくんときいろちゃん』は半世紀以上、子どもたちに読み継がれてきた。『スイミー』や『フレデリック』などの名作絵本で知られるレオ・レオーニ(1910~99)が初めて出した絵本だ。当時も米国は人種差別をめぐり激しく揺れた。激動の人生を送った作者がさまざまな「色」の躍動や交流を通して伝えようとしたものは。
昨年末に静岡県三島市の「えほんやさん」が催したオンライン講座で、絵本コーディネーターの東條知美さん(48)が『あおくんときいろちゃん』を手に語った。「若い頃、小さな子の色遊びの本ととらえていました」。「でも一つの視点に、ものすごいものだぞと気づかされたのです」
1959年に米国で出版。アートディレクターとして活躍していたレオーニが買い物帰りの列車内で、雑誌の校正刷りを丸くちぎって話をつくり、孫2人に聞かせたのが始まりだ。
レオーニはオランダ生まれで、父はユダヤ系だった。イタリアで広告デザインを手がけたが、ファシスト政権下で人種差別の動きも出る。第2次世界大戦直前に米国に亡命し、広告業界で成功。そのかたわら、黒人差別やファシズムを批判する絵も描いていた。
東條さんは続けた。「人種差別問題を子どもがいつか感じ取れる。そんな可能性を託したのではないでしょうか」
刊行前年の58年、レオーニは壁にぶつかっていた。
ベルギー・ブリュッセルであった万国博覧会で、米国の特設パビリオンのアートディレクターを務めた。冷戦下、ソ連の批判をかわす狙いもあって、人種差別をはじめ自国の社会問題をあえて取り上げる企画だったが、人種隔離を支持する米南部の上院議員らが強く反発。展示内容の差し替えに追い込まれた。
未来の希望を示すエリアに展示した、様々な肌の色の子ども7人が輪になって歌う写真も撤去された。
半世紀余りたち、孫娘のアニー…
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