格ゲー聖地、遠のく100円玉 苦肉の策は「自己否定」

新型コロナウイルス

前川浩之
[PR]

 新型コロナウイルスの感染拡大で、緊急事態宣言が再び出された首都・東京。全国にファンの多いあのゲームセンターも、時短営業を余儀なくされている。

客「今こそ娯楽を大切に」

 東京都が求める営業終了の午後8時まであと1時間ほど。家路を急ぐ人が行き交う高田馬場では18日夜、駅近くのゲームセンター「ミカド」恒例の対戦型格闘ゲーム(格ゲー)の大会が始まった。

 「おおっ、入った」「すごい、一気に」。プレーヤーが必殺技を連続して決めると、店員の加瀬陽さん(40)が実況で盛り上げた。マイクの先には、動画投稿サイト「ユーチューブ」でこの対戦を見守る全国の格ゲーファン。この日は約千人が同時視聴した。

 電子音が鳴り響く店内は人がまばらだ。大会参加者は常連客ら6人。緊急事態宣言下、プレーを見つめる人も画面から距離をとっている。ゲーム機の間には飛沫(ひまつ)を防ぐ仕切り板。

 「人の出会いがあるゲーセン、守りたいですよね」。常連という都内の会社員、小沼正人さん(35)は仕事帰りに立ち寄る。ストレス発散のため、好きなゲームを語れる人に会うため、不要不急と言われがちな娯楽こそ大切にしたいという。

時短閉店後はネット配信

 ミカドは、1990年代に国内外でブームになった初期の格ゲーが今も遊べる有名店だ。「ストリート・ファイター」シリーズ、「餓狼(がろう)伝説スペシャル」「THE KING OF FIGHTERS ’94」といった往年のゲームを求め、全国から根強いファンが訪れる。約250台ある古いゲームは独自に手入れし、コロナ前は、全国大会や世界大会が頻繁に開かれていた。

 前回の緊急事態宣言時は休業したが、今回は休まない。午後8時の閉店後は、店員らがユーチューブで、ゲーム動画を配信する取り組みも始めた。

 「ゲーセンの自己否定なのかもしれませんね」。運営会社の運営部本部長、深町泰志さん(46)には配信に複雑な思いもある。「お客さんに来てもらって、100円玉を入れてもらってこそゲーセン」だから。上手な人が初心者に教えるという、このゲーセンで良く見る光景も守りたい。

 この日の大会で優勝した会社員男性(36)は、コロナ禍でゲーセンをつぶせないと、最近になってミカドに通い始めた。「オンラインゲームでも対戦はできるが、やっぱりわいわいやらないと」

 新宿や池袋であのゲーセンも店をたたむ、という情報が飛び交う。ミカドも客の入りはコロナ前の3割未満だが、100円玉を毎日消毒し、ゲーム実況配信を続ける。「いつかまた店で」と思っているはずのファンをつなぎとめるために。(前川浩之)

新型コロナウイルス最新情報

新型コロナウイルス最新情報

最新ニュースや感染状況、地域別ニュース、予防方法などの生活情報はこちらから。[記事一覧へ]