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 【鳥取】新型コロナウイルスが依然、猛威を振るう。長年、鳥類のコロナ(IB)ウイルスの研究をしてきた大槻公一・鳥取大名誉教授(獣医学博士)にウイルスの特徴について聞いた。

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 ――新型コロナウイルスはどのようにして広まったのでしょうか

 動物の間で広く感染しているコロナウイルスの種類は無数にあり、現在でも増えつつある。ヒトに感染を起こしているのは7種類。

 今回の新型ウイルスはこの7種のうちの1種。コウモリ由来のウイルスと見られている。

 未開の森林地帯に生息する野生動物がコロナウイルスの本来の宿主で、病気を起こすことなく安定してこれらの動物体内で増殖している。ところが、ヒトがここへ入り込んだため、コロナウイルスはヒトに初めて感染し、ヒトの細胞で増えるはめになった。一般的に、ウイルスは慣れない新しい増殖環境では強いストレスを受ける。そのために、増殖力は弱いものの強い病原性を示すことがある。コロナウイルスも同様である。

 ウイルスは、生きた細胞の中でしか増えることが出来ない。病原性が強すぎて、感染した細胞(生物)が死んでしまったら、自らも生き延びることはできない。

 コロナウイルスも、ヒト→ヒト感染を繰り返す間に、ヒトの細胞に慣れ、ヒトでの増殖力と感染力は高まる。それに反比例して病原性は弱まり、危険度の低いウイルスへ変容する。

 新型コロナウイルスの国内での感染が広がった昨年3、4月の死亡率が高かったのは、このウイルスがまだヒトの細胞に慣れていなかったため、強い病原性を示していた可能性がある。

 爆発的に感染者が増えている今回の第3波では、新型コロナウイルスがヒトの細胞に慣れてきたことにより、ウイルスの増殖力が上がっているのではないか。

 ――若い人より高齢者の方が重症化しやすいのはどうしてでしょうか

 私たちの鳥類のコロナ(IB)ウイルスの実験から、コロナウイルスは、様々な違う性質を持つ、多様性の高い小集団から成り立っているという結論を得ている。色々な強さや種類の病原性を示す小集団が入り交じっているという考えだ。

 感染した宿主の状況により、優先的に増殖するウイルス小集団は変わる。新型コロナウイルスの場合、免疫力の強い若い人では病原性は弱いが増殖力の強い小集団が優先的に増え、高齢者や基礎疾患のある人では、病原性の強い小集団が増殖するという現象が起きているのではないか。その原因は分からないが。

 ――海外ではワクチンの接種も始まりました

 ワクチン接種の待望論は高い。その有効性は不確実。歴史的に、すぐれた動物のコロナウイルス感染病ワクチンは開発されたことはなく、ヒトコロナワクチン開発は今回が初めて。

 私たちのIBウイルス研究では、コロナウイルスは色々な臓器で増殖でき、感染も長引くという特徴がみられた。IBワクチン接種が世界の養鶏場でなされた結果、鶏に泌尿器病(腎炎)を誘発するという現象も過去に多く見られた。新型コロナも肺炎など呼吸器での症状が主であるが、ワクチン接種が消化器病や他の症状を示す病気を誘発しないとは言い切れない。それと、新型コロナワクチンは、コロナウイルス感染を防ぐことができるのか、単に症状を軽減させるだけの効果しかないのか不明。ワクチン効果は期待したいが、ワクチン接種には慎重さも必要であろう。

 ――感染経路不明の感染も増えています

 新型コロナの症状では、下痢が気になる。私たちのIBウイルス研究では、肛門(こうもん、総排泄〈はいせつ〉腔)に近い結腸で、他の臓器よりも長期間にわたってウイルスは増殖した。便器などを介したトイレ内での感染が起きている可能性もあるのではないか。(聞き手・矢田文)