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 福岡県糸島市の志摩芥屋(けや)地区に江戸時代から300年近く続く伝統野菜がある。「芥屋かぶ」だ。高齢化で担い手が減る中、農家が自家用に栽培して種をとる自家採種で守ってきた野菜をたやすまいと、シニア世代の移住者と地元の高校生、小学生が継承を模索している。

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 昨年12月中旬、糸島市志摩御床の市立引津小学校の畑で、2年生約30人が今シーズン2回目となる芥屋かぶの収穫に取り組んだ。長さ20センチほどのカブは勾玉(まがたま)型で上半分は赤紫色。中は真っ白だが、塩水でもんで甘酢漬けにすると鮮やかなピンクに変わる。芥屋地区以外では栽培しても大きくは育たず、発色もよくないとされる在来種の野菜だ。

 この日は重さ500グラムほどのカブを100個以上収穫し、特別活動担当の宇根悠亮教諭(25)らが葉を切り落とした。「以前食べたら最初はちょっと辛かったけど、後で甘酸っぱくおいしくなった」と男子。給食用のカブ以外は自宅に持ち帰っていいことになっており、持ちきれないほど袋に詰め込む子もいた。

 芥屋かぶの栽培が同小2年の生活科の授業として始まったのは2年前。芥屋地区で芥屋かぶを守り育てている東(ひがし)紀子(としこ)さん(79)からカブの説明を聞き、種まきや間引き、採種などのノウハウは県立糸島農業高校の生徒に教わった。

 昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で高校生から直接手ほどきを受けることはできず、オンラインによる「リモート指導」に。それでも「前の2年生から受け継いだ大切な野菜なので、下級生に種を受け継いであげたいという気持ちが児童に高まっているようです」と宇根教諭。

 一方、糸島農高で芥屋かぶを作っているのは、その名もずばり「芥屋カ部」の2、3年生たち。同校と芥屋かぶの関わりは8年前、授業で漬けもの作りを始めたのがきっかけだ。その後、東さんの助言も受けながら栽培方法を工夫してカブ作りを本格化させ、次の世代への継承を視野に引津小との交流も深めた。

 「高校の畑は芥屋とは土が違うので発芽率が低く、台風で種まきを何回もやり直すなど失敗を重ねました」と3年生の部員たち。昨年9月には、カブの生産者や地域住民、糸島の水産加工品メーカー「やますえ」などと初の「種まき交流会」も開催し、芥屋の畑で一緒に種をまいた。

 リーダーの松前開斗さん(3年)は昨秋、栽培の苦労や関係者との交流、レシピの開発などを通じて芥屋かぶの魅力を発信した「私と伝統野菜の物語~芥屋かぶ~」で毎日農業記録賞で優良賞(高校生部門)を受賞。「メディアで取り上げられて、芥屋かぶと、部の知名度が上がったことが一番うれしい」と話す。

 「やますえ」は今回、「糸島おせち」の一品に芥屋かぶの甘酢漬けを採用した。20年以上前に神奈川県から糸島に移住し、芥屋かぶと出会った東さんは「八代将軍徳川吉宗が指示した産物調査で、黒田藩から『志摩村の芥屋かぶ』が報告されて、あと13年で300年。それに向けて若い人たちでどんどん進んでほしい」と期待する。(鳥居達也)

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