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 【岐阜】午後4時15分、関市の電動機械部品メーカー「鍋屋バイテック会社」のマーケティング営業本部で働く大矢寛子さん(31)は、同僚たちに声をかけた。

 「お先に失礼します」

 2019年9月に2年間の育児休暇から復帰し、今は時短勤務中。夕方には保育園に3歳の息子を迎えに行くため、会社を出る。

 大矢さんは今月、「チームリーダー」に昇進した。「先輩たちが前例をつくってくれたおかげ。子育てをしていても昇進のチャンスがある」と話す。

 その1人が、大矢さんの5年先輩でデジタルマーケティング部の課長補佐・大野見伊子さん(38)だ。

 「入社当時は女性によるお茶出しや給湯室の掃除は当たり前。出産や妊娠で辞めてしまう女性がほとんどでした」と振り返る。

 疑問を抱いた大野さんは動いた。給湯室の掃除は同期の男性社員と分担し、お茶出しも廃止。男性社員も好意的に協力してくれた。

 2人の子どもを出産し、社内で3番目に育休を取得。約3年後に復帰した。社内からは「女性初の役員に」と期待がかかる。

 同社は全社員495人のうち、女性は3割以上の181人。10年には、産休に加え、最長3年間の育休や子どもが小学3年になるまでの時短勤務を導入した。現在、出産した女性社員全員が育休を取得後、復帰している。

 女性の離職率は05~07年に31%だったが、15~17年は3%に減少した。同社の丹羽哲也常務取締役は「労働人口が減っていくなかで性別問わず、やる気のある人材を獲得し成長させようと女性の働く環境を整備した。結果、人手不足の解消や新人教育のコスト削減につながった」と話す。

 ただ、県全体では女性の社会進出は遅れている。内閣府などの調査では、県内の企業で管理職に占める女性の割合は14・5%で全国40位と低迷。女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)でも、25~34歳の出産・子育て期が全国平均を約2ポイント下回っており、この時期に一旦離職する割合が高いことが、キャリアが積めない一因となっている。

 また、「子どもができても職業を続ける方がよい」と考える女性も36・4%で、全国の54・2%を下回った。県の男女共同参画・女性の活躍推進課の担当者は「女性本人が望んでいても、子どもを産んだら家庭に入るよう家族や親族から言われるケースも多いためではないか」と話す。

 県が16年度から始めた「清流の国ぎふ女性の活躍推進計画」では、22年度秋までに女性管理職の比率や25~34歳の女性の労働力率を上げることを目標に掲げる。同課の担当者は「女性たちが多様な生き方でさらなる活躍ができるように働きやすい環境を整備していきたい」と話した。(松山紫乃)

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 国連の女子差別撤廃委員会で委員長を務めた林陽子弁護士 岐阜県の「男女共同参画計画」では、SDGs(持続可能な開発目標)のアジェンダの一つである「ジェンダー平等の実現」が重視されおり、国際的な視点を取り入れた点は評価できる。

 だが、県民の意識調査では「男は仕事、女は家庭」という性別による役割分業を否定する割合は徐々に増えている一方、「小さな子どもがいると女性は一度、仕事を辞めた方が良い」という考えは根深くあり、これは働く女性を支援する制度や設備が不足しているからだと考えられる。「女性活躍」の先進例を積極的に取り入れ、県民に意識を浸透させていく必要がある。

 コロナ禍で、時差出勤や時短勤務、テレワークなど、新しい働き方が急速に浸透しつつある。その中で新知事には、男性中心の労働慣行を変えるきっかけとなるような取り組みに注力してほしい。

 また、女性活躍のためには、その権利を守ることが大前提となり、女性への暴力の根絶も重要な課題だ。DVだけではなく、若年女性の性的搾取からの保護など、あらゆる年齢層の女性が安全に暮らせるための施策にも力を入れてほしい。

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