田植えの苗確保に影響 大雪でハウス損壊 岩手県南地域

泉賢司
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 昨年12月中旬から岩手県南に降った大雪は、コメどころの春の田植えにも影響しそうだ。雪の重みで稲の苗を育てるハウスが多数損壊し、予定通りの苗が作れない農家が続出しているためだ。JAや自治体は、苗の確保とハウス復旧の支援対策を急いでいる。

 県の15日までのまとめでは、花巻市以南の県南内陸7市町で、損壊した農業用パイプハウスは2655棟。その多くが育苗ハウスという。倉庫や畜舎などを含めた農業施設の被害額は13億4533万円に達し、調査が進むとさらに増える見通しだ。

 奥州市(江刺を除く)と金ケ崎町に、約9千ヘクタールの水田を抱えるJA岩手ふるさと管内では、18日までのまとめで、845棟の育苗ハウス損壊が判明した。

 例年は3月中旬から4月にかけて、主力品種ひとめぼれなどの苗作りが始まるが、今年は水田全体の13%ほどにあたる約1200ヘクタール分の苗作りに影響しそうだという。

 同JA営農企画課の伊藤直飛人さんは「ハウスを建て直すにしても、作業の人手不足が心配される」と話す。同JAはハウス資材購入代への助成を検討。復旧資金特別融資も実施するが、育苗開始が大幅に遅れる農家が出る可能性もあるという。大雪被害を受け、高齢化している農家からは「営農をやめたい」という声も聞こえてくるといい、危機感を募らせる。

 奥州市胆沢小山の高橋重一さん(74)は、育苗ハウス2棟が雪の重みでつぶされた。例年は5、6軒の農家からの委託を含め、ひとめぼれともち米を計約18ヘクタール作付けするという。だが、今年は労力や費用を考えて、育苗ハウスの再建を1棟にとどめ、「委託の半分ぐらいは断っている」と話す。「これは災害。生活のダメージはとんでもなく大きい」

 JAや奥州市、県などは、施設に余裕のある法人や生産組合、ほかの農協などに苗の不足分を委託できないか検討に入った。小沢昌記市長は「宮城県北との連携も必要かもしれない」とし、県境を越えた苗の確保策も視野に入れる。

 一関市では、園芸用ハウスなど790棟の農業生産施設が損壊。このうち育苗ハウスは262棟に上る。市は、JAいわて平泉などと連携して苗の確保を進める考えだ。勝部修市長は18日、国や県の対策決定を待たずに、市独自で壊れたハウスの解体・撤去を支援する考えを表明するなど、対策を急ぐ。(泉賢司)

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 想定を超えた大雪に、除雪費の予算を使い切る自治体も続出している。

 一関市は昨年末、市長の専決処分で1億円を補正し、当初額と合わせて3億8千万円に。奥州市は当初額の2・9倍の14億円余りになる見込みだ。

 総延長2466キロの市道を除雪する奥州市は、降り始めの昨年12月中旬から、市内各所で累計120~180センチの降雪に見舞われたといい、委託業者の除雪機械がほぼ毎日稼働。当初予算に計上した除雪費4億9150万円を使い切って、12月28日に3億2150万円を補正した。

 さらに、3月までを見通して、除雪費の総額を14億1630万円と見込む。補正予算案を今月下旬の議会に提出する予定という。

 金ケ崎町でも、当初予算の1億2千万円では足りず、補正予算案を検討。コロナ禍で支出が増える中、各自治体は除雪費の財源確保にも頭を悩ませている。