「なんでそうなるの」 市議がコロナ感染を公表すると

新型コロナウイルス

佐々木洋輔
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 「うわさ、うわさ、うわさ。根も葉もないことを、よくこれだけ思いつくなあと思いました」

 昨年9月に新型コロナウイルスに感染し、実名で公表した津市議の山路小百合さん(50)は、その当時のことを振り返る。

 「学校関係者が濃厚接触者になった場合、感染者捜しや、その先のいじめにつながるおそれもあり、児童生徒、保護者の不安も増すばかりです。対策についてはいかがでしょうか」。市議会の一般質問で新型コロナウイルス感染対策について、市側をただした日の翌日、自宅で急に体がだるくなるのを感じた。

 「議会の疲れかな」。さほど気にとめなかったが、夜中になり、頭痛に加え、体の痛みが急にきつくなった。微熱が続き、「風邪だろう」と思いつつも、念のためPCR検査を受けた。結果は陽性だった。

 感染について思い当たる節はなかった。だが、そのことを深く考えるよりも、「今、何をしなければいけないんだろう」という思いが先だった。

 入院準備と家族に伝えることは。感染が疑われる時期から接触した人は。どこに行って、誰に会ったっけ――。

 体調が優れない中、矢継ぎ早にやらなければいけないことを思いつく。でも、一番やらなければいけないことは何か。「私からの感染者を増やさないこと」。そう思った。

 「年代50代、性別女性、居住地津市、職業津市議会議員」。県内延べ466例目として、こう匿名で発表されれば、別の50代の女性市議が感染したと思われる可能性がある。実名の公表にためらいはなかった。

 「飲食店でうつった」

 「ライブハウスに行っていた」

 公表直後からSNSに、そういったうわさが書き込まれた。確かに飲食店で10分程度、店主と立ち話をしたことはあった。音楽イベント支援の会議に出席したこともあった。でも、店では飲食をしていないし、ライブハウスにも行っていない。飲食店やイベント関係者にも思わぬ迷惑をかけ、心苦しかった。

 「なんでそうなるの」。そんな憤りが募った。SNSを見ないようにしても、心配した知人からは「こんなこと書かれているよ」と連絡が来る。根も葉もないうわさがどんどん広がっていくような気がした。

 自らの体調が回復するとともに、うわさは徐々に耳に入らなくなった。だが、ネット上からすべてが消えたわけではない。

 こうした問題が起こらないようにするには、思いやりが必要だと感じている。「相手が家族や大切な人だったら、根も葉もないうわさをかき立てられますか。そうされたら、あなたはどう思いますか」(佐々木洋輔)

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