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 戦時中、ある特攻隊員が書き残した一枚の短冊がある。「只勝つのみ」。出撃を前にした重い覚悟の言葉が刻まれている。この短冊が、戦後75年を経て遺族の手元に渡った。きっかけは一つの新聞記事だった。

 昨年11月5日の中日新聞三重県版に、こんな見出しの記事が載った。

 「特攻隊 辞世の言葉を冊子に 両親が寮を営んでいた伊勢の岡出さん」

 両親が三重県宇治山田市(現・伊勢市)にあった明野陸軍飛行学校を出た将校が入る寮を営んでいたという伊勢市の岡出とよ子さん(80)。出撃前の特攻隊員が直筆で残した34の「辞世の句」を、これまで大切に保管し、冊子にまとめたことを書いた記事だった。34の短冊の写真とともに紹介された。

 「まさか……」。自宅で記事を読んでいた伊勢市の中西佳与子さん(66)と夫の幸一さん(69)は、一枚の短冊が目にとまった。「只勝つのみ」と大胆に書かれ、下の方には「宮村少イ」と署名があった。佳与子さんは、6年前に亡くなった父・宮村和足さんのことを思った。父は特攻を命じられたが、先に終戦を迎えていたのだ。

 昨年11月初旬。夫婦は、岡出さんが市立伊勢図書館で開いた34の短冊の展示会を訪れた。

 「父の字にしては大胆で大きすぎるような……」。実物の短冊を見た佳与子さんは、父が書いたものかどうか確信できずにいた。

 帰宅後、父が書き残した略歴や戦時中の写真を貼ったアルバムを、初めてじっくりと見た。略歴には昭和19(1944)年9月27日の日付で「陸軍明野教導飛行師団司令部付(三重県)」とあり、アルバムには当時の写真も残っていた。兄に確認すると、父の筆跡だという。父が残した短冊だと確信した。

 父は終戦後、自衛官として勤務…

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