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 【福岡】「響灘地区を洋上風力発電産業の一大拠点に」。北九州市が若松区で取り組む事業に追い風が吹いている。国や企業でつくる官民協議会が昨年12月、2040年までに国内の洋上風力発電を世界3位の規模に押し上げるビジョンを示した。市議会でも市の事業に大きな雇用創出が期待されているが、課題もある。

 巨大なクレーンやジャッキを搭載した船が停泊する岸壁の奥で、ショベルカーが整地作業をしていた。響灘地区で国や市が進める洋上風力発電の「基地港湾」整備だ。

 長さ100メートル近く、重さ400トン前後にも及ぶ風車部品の積み下ろしや保管、仮組み立てに耐えられるよう地盤を強化したり、運搬船が出入りできる水深を確保したりしている。総事業費65億円のうち38億円を市が負担する。

 響灘やその臨海部では、九州電力の子会社など5社で作る「ひびきウインドエナジー」が総額1750億円程度を投じて洋上風車25基を設置し、最大22万キロワットを発電するプロジェクトを進めている。風力発電施設の維持管理を担う企業がトレーニングセンターや倉庫を建て、海洋土木大手は風車設置作業船の母港を北九州港に決めるなど産業が集積しつつある。

 市が目指すのは、基地港湾の活用によって物流やメンテナンスに関連した仕事が生まれることや、風車の部品調達などに市内のものづくり企業が加わったり企業が進出したりして雇用創出につなげることだ。そのためには響灘以外にも、多くの海域で大規模な洋上風力発電所の建設や運用が続けられる必要があるが、先行きを見通せずにいた。

 官民協議会のビジョンは、40年までに国内各地に発電能力の総計が原子力発電所30~45基分に相当する洋上風力発電所の導入を目指す。九州地区だけでも約12基分相当の1190万キロワットの最大目標を掲げた。

 事業の中心を担う市エネルギー産業拠点化推進課の須山孝行課長は、ビジョンの内容に「これでようやく日本にも大きな市場ができる」と安堵(あんど)した。「今後、西日本エリアで生まれるであろう洋上風力発電の仕事を獲得し続ければ、安定した産業や雇用の創出につなげられると展望が開けた」

 若者の市外流出が続く北九州市では、洋上風力発電の拠点化事業に期待が高まる。ここ数年、市議会では風車製造を寡占する欧州メーカーの生産拠点の誘致や、部品調達の多くを地域企業につなげることを市に要望する質問が続く。昨年9月の市議会では「製鉄をここに誘致したとき以来のビッグチャンス」と、発破をかけた市議もいた。官民協議会のビジョンでも、40年までに国内調達比率60%という目標が設定された。

 洋上風力発電の事情に詳しい経済産業研究所リサーチアソシエイトの岩本晃一さんは「日本の洋上風力発電で採用が予定される欧州の風車メーカー2社はいまのところ、基幹部分は欧州で生産して日本に出荷するという方針を変えていない」と話す。一方で風車の柱などの部品製造や建設工事、運搬、保険金融やメンテナンスは地場企業に任せられる事例が中国や台湾ではみられ、事業費のかなりの割合を占めるという。

 岩本さんは北九州市に対し「まずは西日本の海域で生まれる仕事を確実に取ること。事業の可能性がある自治体に互いの利益となるようなプランを示し、商社のような営業活動を続けることだ」と助言する。(吉田啓)

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