拡大する写真・図版「日本文化概論」の実習授業で、オンラインで生け花の作品を見せる生徒たち(画像の一部を加工しています)=2021年1月15日午前、東京都台東区の都立白鷗高校・付属中学校

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 緊急事態宣言下の入試シーズンが本格化するなか、首都圏の中学や高校では、感染防止のためのオンライン授業が再び広がっている。塾では直前講習をネット配信する動きも。コロナ禍で異例づくしの今季、入試本番はもうすぐだ。(柏木友紀、宮坂麻子)

「学び止めない」実習も画面で

 1月15日午前、都立白鷗高校・付属中学校(台東区)の校舎は静まりかえっていた。緊急事態宣言初日の8日から全学年がオンライン授業に入り、教職員も多くが在宅勤務で授業を配信している。だが、画面を通じた授業は盛り上がっていた。

 「右手前のスイートピーを少し起こしてみて」。講師の指示で、男子生徒が花を上に向ける。「ストック下部の葉は取ってすっきりと」。講師は画面に映った生徒たちの作品を見ながら次々に講評していく。

拡大する写真・図版「日本文化概論」の実習授業で、オンラインで生け花の作品を見せる生徒たち(画像の一部を加工しています)=2021年1月15日午前、東京都台東区の都立白鷗高校・付属中学校

 高2の「日本文化概論」の生け花の授業だ。地域の市民講師が教室で生け花の実演と講義をし、生徒は各家庭で家の花器を用いて生ける。生花と剣山は2日前の登校日に持ち帰った。

 「カメラの置き場所が難しいけど、友達全員の作品が画面で一度に鑑賞できて面白い」、「先生と自分の見る向きが反対で戸惑ったが、オンラインでも実習ができてよかった」など、生徒たちはおおむね満足そうだ。

 階下の和室では「茶道」が行われていた。和室のない家も今では多く、生徒たちは自宅の卓上に棗(なつめ)に見立てたふた付きお椀(わん)や、茶杓(ちゃしゃく)に見立てた箸を並べ、袱紗(ふくさ)代わりのタオルを手に、講師の後についてお点前の作法を実習した。

拡大する写真・図版オンラインで行われた「日本文化概論」の茶道の実習授業=2021年1月15日午前、東京都台東区の都立白鷗高校・付属中学校

 同時並行でプロ棋士による「囲碁」、音楽室からは「和楽器」の授業も配信。「日本文化概論」は、同校が力を入れる伝統文化教育の一環で、地域との連携によって伝統・文化に触れる授業だ。

 入試を控えたこの時期、同校では新型コロナウイルスの感染防止と生徒の学びを考え、2月2日まで原則オンライン授業に切り替えた。週1回の登校日を組み合わせて生徒のメンタルケアや学習のフォローに気を配る。同3日には付属中の入試(適性検査)があり、通常登校は早くても8日以降、高3生は自由登校という。

 生徒たちは「生活リズムが崩れやすい」「友達と話す機会が少ないのが悲しい」などと感じつつも、「通学の時間を勉強に使うことができる」「不自由なく勉強でき、週1回は登校日があるのでありがたい」などと前向きに受け止めているという。

 善本久子校長は「オンライン授業には当然、賛否がある。それでも、自分で頑張ろうと思ってくれているのは頼もしい。昨年の休校期間に構築したオンラインでの学びを止めてはいけない。オンラインだからこそできることを工夫したい」と話す。

中高一貫校、登校と併用も

 2月1日から私立中の一般入試が始まる東京都や神奈川県の中高一貫校では、オンライン授業に切り替えたり、対面授業を併用したりする動きが広がる。

 ドルトン東京学園中等部(東京都調布市)は、1月8日から入試終了後の2月7日までの1カ月間、すべての授業をオンラインにした。生徒や家族が感染者や濃厚接触者になった、という連絡も増えてきている。入試などに備えて1月18、19日には全教職員にPCR検査を実施。出勤もできるだけ控え、感染予防を徹底する。

 「オンラインと対面の両方に良さがあり、本来の授業は、併用が理想だと考えている」と荒木貴之校長。ただ、首都圏の感染拡大の現状などをふまえた結果、「最先端のオンライン授業をできる環境にあるのだから、オンラインによる感染予防は、社会的役割を果たすことにもつながると判断した」という。

 品川翔英中(品川区)も、1月8日から2週間としたオンライン授業を、2月12日まで延長すると決めた。中学、高校の入試は同11日まで続き、2千人以上が受験予定という。柴田哲彦校長は「通学域も広い上に、多数の往来によって、受験生や在校生、その家族にも影響が出ることは控えたかった」という。

 1月12日以降、3時間目からの登校を予定していた青稜中(同)は、生徒へのアンケートで感染の不安を訴える回答が多かったため、対面授業かオンラインを選べる選択制を導入した。

 慶応湘南藤沢中等部(神奈川県藤沢市)は、1月18日から学年ごとに登校日を1日おきとし、オンライン授業を併用。筑波大付属駒場中(東京都世田谷区)は、2学期から午前10時始業の時差登校を続けており、1月12日からは週1日の分散登校とオンライン授業を組み合わせている。

塾の講習も在宅の動き

 塾でもオンライン授業の動きが再び加速している。

 ナガセグループは、1月8日の緊急事態宣言初日から、中学受験塾の四谷大塚や大学受験予備校・東進ハイスクールなど、該当地域の直営塾を午後8時閉館とした。自宅で動画配信による授業や演習に取り組んでもらう。東進の講義はもともと映像による授業で、自宅でも同一の内容が受けられる。それでもモチベーションの維持や教員に質問するなどの目的で各校舎に通う生徒が多いが、昨年の休校以降は在宅受講コースの受講者が急増している。小1~中3の算数・数学の基礎講座を無料で公開したオンライン講座には26万人が登録し、今年3月まで続く。

 河合塾も、冬期講習や直前講習の多くにオンライン対応の授業を導入している。対面も選べるが、大学入学共通テストの講座は6割がオンラインで受けた。

 サピックスでは入試直前の小学6年生の授業に限り、校舎での対面かオンラインかをその日ごとに選べるようにした。おおむね半分弱の生徒が自宅から映像授業を受けているという。広野雅明・教育事業本部長は「教室と家では緊張感が異なる。問題演習時は試験時間をやや短めに設定するなどあえてプレッシャーをかける工夫をし、生活リズムは崩さないことが大切」とアドバイスする。

(変わる進学)