[PR]

 コロナ禍で中止が相次いだ今年の成人式。せめて晴れ着姿を残してあげたい――。そんな思いから、東京都江東区の着物店の20代の兄弟が、無料で振り袖の着付けや写真撮影をする企画を立ち上げた。すると、全国の着付け師や美容師から協力の申し出が寄せられ、新成人からも依頼が相次いだ。2人は2月の開催へ向け、急ピッチで準備作業を進めている。

 企画を考えたのは、カジュアル着物専門店「巧流―call―」の元山巧大(28)、誠也(26)両代表。都内の多くの成人式が中止やオンライン開催に切り替わっていくのを目の当たりにし、巧大さんは「着飾って、懐かしい友人と思い出をつくるのが成人式の醍醐(だいご)味なのに」。8年前の自分の成人式の写真を見ながら思った。誠也さんは兄の思いに共感し、少し考えてから言った。「なら、僕らで成人式をつくろう」

 ただ、巧流では「日常のファッションに着物を取り入れる」というコンセプトで、現代のトレンドを織り交ぜた創作着物をつくっている。着物は洋服やスーツの生地で仕立てており、振り袖はない。

 成人式といえば振り袖。ならば、自分たちでオリジナルの振り袖を仕立て、着付けやヘアアレンジ、撮影を担ってくれる人をSNSで募り、資金はクラウドファンディングで調達しよう――。そんな構想を今月6日、ツイッターとインスタグラムに投稿すると、「千葉から駆けつける」という美容師、「帯を送る」という名古屋の着付け師など、数十件の連絡が舞い込んだという。

 着付けを買って出た東京都中野区の着付け師、越永純子さん(50)は、来年成人式を迎える双子の娘がいる。娘たちは今から髪を伸ばして心待ちにしている一方で、「来年はどうなるのか」と不安を抱えているという。「色々なことが中止になる世の中だけれど、大人になる節目の姿を見せる機会は、本人にも家族にとっても大切。同じ世代の子を持つ親として力になりたい」と話す。

 すでに新成人約20人から参加希望の連絡があった。東京都江東区出身の私立大2年の伊藤亜莉沙さん(20)の成人式は、オンライン配信になった。この1年、ほとんどの授業がリモートになり、「孤独が募る中で成人式を楽しみにしていた」という。成人の日は、一人暮らしの自宅で大学の課題に明け暮れた。そんな姿を見て、母親がこの企画を教えてくれた。当日は母親と参加する。「成人の日に言えなかった『ありがとう』を、振り袖姿で伝えたい」と話す。

 巧大さんと誠也さんはいま、スエードやレースを使った振り袖約30着の仕立ての真っ最中だ。誠也さんは、「コロナ禍で向かい風が吹き続けている。新成人を応援する気持ちが詰まったこの企画が、彼らの追い風になればいい」と話す。

 企画は2月19~21日の3日間で男女ともに参加できる。東京駅付近のレンタルスペースで着付けとヘアアレンジを行い、丸の内で撮影を行う。巧流の振り袖や着物を借りられるが、持ち込みも可。午前、午後の2部制で、各回15人まで。26日からクラウドファンディングで資金を募る。問い合わせは「巧流」のホームページ(http://call-kimono.com/別ウインドウで開きます)から。(加藤あず佐)