五輪への逆風「国民と一緒じゃないと…」揺れる選手たち
逆風の五輪㊤
1年延期された東京五輪の開幕まで23日で半年となった。だが、新型コロナウイルスが猛威を振るい、五輪・パラリンピックの開催に懐疑的な声は強まるばかりだ。4年に1度、私たちを熱狂させてきたスポーツの祭典がかつてない逆風にさらされている。
昨年11月8日、体操の国際大会が東京の国立代々木競技場で開かれた。閉会式で、種目を鉄棒に絞って4度目の五輪出場を目指す内村航平(32)がスポットライトに浮かび上がり、意を決したように話し始めた。
「国民の皆さんとアスリートが同じ気持ちじゃないと大会(東京五輪)はできないと思う。どうにかできるやり方は必ずあるので、どうか『できない』とは思わないでほしいです」
約2千人の観客に向けてそう語りかけた。
1年延期が決まった後、五輪競技で初めて海外選手を招いた大会は、五輪に向けた試金石と言われた。新型コロナウイルスの1日の感染者数が全国で千人を超えるなか、観客を減らし、選手への感染対策も強化された。逆風の中での、選手としての率直な思い。あいさつが終わると、会場からは拍手が起こった。
内村はその後の会見で2、3カ月前から考えていたと明かし、「SNSで言っても意味がない。こうした場で発信する方が届くと思い、ストレートに話した」と思いを語った。
内村の発言を聞き、同じ体操の選手は言った。
「どうしても口にできなかったことを言ってもらえて、うれしい」
200を超える国・地域に中継され、数十億人が視聴するスポーツの祭典。今年は日本の選手にとって、異例の延期を経て、夢の舞台である五輪がようやく自国で開催される特別な年になるはずだ。
だが、日本の体操界を引っ張ってきた内村の発言に集まったのは、共感だけではなかった。
SNS上では「応援したい」…