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 「一生に一度、あるかないかの体験でした!」。神奈川県逗子市立久木中学校1、2年の生徒12人が20日、国際宇宙ステーション(ISS)とアマチュア無線で交信した。学校からの呼びかけに応じる米国の女性宇宙飛行士の声が聞こえて交信が始まり、最後には野口聡一さんも飛び入り参加し、会場の図書室に拍手がわき起こった。

 小中学校とISSの宇宙飛行士のアマチュア無線交信「スクールコンタクト」は、NASA(米国航空宇宙局)の教育プログラムの一環として行われていて、国内でもこれまでに100件の交信例がある。久木中学では、卒業生や保護者だった会員がいる「逗子・葉山アマチュア無線クラブ」(石井康生会長)が支援し、自然科学部員を中心に公募した1、2年生の男女12人が参加した。

 石井会長らは、数年前から学校側と相談を重ねて交信希望を送り、昨年11月にNASA側から実施決定の通知が来た。準備はそれから急ピッチで進んだ。NASAの指定通りの機材をそろえ、総務省に中学校の臨時無線局の開局申請を出した。生徒たちには放課後に6回、アマチュア無線やISSの解説など講習を重ねた。交信で伝える宇宙飛行士への質問項目は、生徒たちが事前に考え、英訳してNASAに送った。

 校舎屋上に高さ約4メートルの仮設アンテナを立てた。パソコンの制御でアンテナが動き、刻々と移動するISSを追尾する。交信できるのは、ISSが南西から上空を通過して北東へ消えるまでのわずか10分ほど。1月10日のアンテナ設置後に交信リハーサルをするはずが、緊急事態宣言で中止となり、ぶっつけ本番で当日を迎えた。

 アンテナ直下の図書室には生徒や教諭、無線クラブ会員らが集まり、緊張の面持ちで交信開始を待ち受けた。午後5時18分、サポート役の無線クラブ会員が学校臨時局のコールサインで呼びかけを始めると、NASAの宇宙飛行士シャノン・ウォーカーさんが応じるのがはっきり聞こえた。

 1人目の加納みなみさん(14)は「ISSではどんなコロナ対策をしていますか」と英語で質問。ウォーカーさんも英語で「よい質問ね。基本的に対策は地上でしっかり行い、宇宙にウイルスを持ち込みません」などと答えた。

 12人全員が用意した質問を終え、ウォーカーさんにお礼を伝えて交信を締めくくろうとした瞬間、朗らかな日本語の声が響いた。

 「久木中学校、がんばれ」。日本人宇宙飛行士の野口聡一さんだった。図書室内がどよめきと拍手に包まれる中、予定時間が終了して交信は途切れた。

 この後、英語の教諭が録音したやりとりを再生・翻訳して解説。生徒たちは「英語が不安だったけど楽しかった」「人生で一番の緊張を味わった」「相手に伝わるかが心配だったが、優しく答えてもらった」などと口々に感激を語った。

 加納さんは「コロナの中でも宇宙飛行士たちが頑張っていると知り、自分も将来、社会の役に立ちたい。目標は医療職ですが、宇宙にもかかわっていきたいな」。生徒の講習に付き合った黒柳めぐみ統括教諭は「『本物』に接する貴重な機会をいただいた。子どもたちの人生の糧になったと思います」と話した。(織井優佳)

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