コウノトリと共存の環境を 豊かな生態系県全域に 徳島

雨宮徹
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 徳島県吉野川流域を中心にコウノトリやツル類が飛来する豊かな生態系を守ろうと、小松島市阿南市など県南部の自治体も参加した全県規模の新たな組織ができた。コウノトリが繁殖できる環境の保全に努める鳴門市での活動などを広げ、那賀川や勝浦川流域でも貴重な生き物とともにすむ環境づくりに取り組む。

 国の特別天然記念物絶滅危惧種に指定されているコウノトリは、兵庫県豊岡市が2005年から野生復帰を目指し、人工繁殖した個体の放鳥を始めた。

 鳴門市では15年、吉野川流域のレンコン畑で飛来が確認され、その後、定着したつがいが営巣、繁殖するようにもなった。

 県内では世界的に希少なナベヅルが大陸から飛来し、越冬していることも確認されている。希少種の飛来や繁殖の確認は、多様な生き物がすむ里山や水辺環境が保たれていることを示している。

 豊かな生態系を守ろうと、17年秋、産学官民の団体が集まり、「吉野川流域コウノトリ・ツルの舞う生態系ネットワーク推進協議会」ができた。国土交通省徳島河川国道事務所を事務局とし、鳴門市など県北部を中心に活動してきた。

 一方、那賀川流域など県南部でも、コウノトリなどの飛来が目撃されるようになっている。

 推進協は活動範囲などを広げるため、新たに小松島市と阿南市をメンバーに加えて「徳島県流域」を冠した組織を立ち上げた。

 今月15日、徳島市内で開かれた「徳島県流域コウノトリ・ツルの舞う生態系ネットワーク推進協議会」の第1回会合には小松島、阿南両市の市長も出席し、会長に徳島大学大学院の武藤裕則教授(河川工学)を選んだ。また、2050年までに豊かな生態系を県全域へと広げる活動目標や基本構想案について議論した。河川の砂州を好むナベヅルの保護のため、吉野川流域の河川敷4地点で人が立ち入らないよう求める看板を設置することを確認した。

 鳴門市のコウノトリの観察を続ける関係者は、電線や鳥獣被害防止ネットなどの人工物によって傷つく例が確認されているとし、傷病した個体を住民らが目撃した場合に連絡できる窓口の一本化を他の自治体でも進めるよう求めた。

 会長の武藤教授は取材に対し、「コウノトリやツル類のねぐらになる潜在性が高い地域を県全域に広げるという、全国的にも珍しい取り組み。実現するために重要な『人づくり』『地域づくり』につなげ、人も恩恵を受けられるような関係を築きたい」と話した。(雨宮徹)