ここまでケアの水準が低い高齢者施設が今もあるのか――。公益財団法人Uビジョン研究所理事長の本間郁子さんは、ある事情で訪問した特別養護老人ホームで見た介護の光景が忘れられない。とりわけ衝撃を受けたのが、入浴を待つ高齢者の姿だった。
入浴室の外の廊下で、車いすに乗った入居者たちが並んで順番待ちをさせられていた。みな無言のままだ。先頭にいる女性は、上半身はだかの状態だった。浴室のカーテンも引かれておらず、入居者の体をふく様子も丸見えの状態だった。本間さんは「これは性的虐待ではないか」とその場で指摘した。3年ほど前のことだ。
人生100年時代、高齢者施設の密室化に本間さんは警鐘を鳴らす。「頼れる家族がいない独居や『老老』世帯が増える。子どもがいても、入居する本人が100歳なら子も70代の高齢者で、施設をチェックできないかも知れない。重い認知症などで本人は声をあげられず、家族の目さえ届かない。コロナ禍でさらに密室性は高まっている。これは怖いことです。ケアの質には私たちの老後の人生がかかっている」
本間さんが運営するUビジョン研究所は、夜間「抜き打ち調査」などの評価に基づく独自の施設認証制度の普及を目指している。現在6施設が認証を受ける。「抜き打ち調査」を受けてもよい、という施設だから、認証施設の住環境やケアは全国トップレベルだという。
その一方で、冒頭の特養ホームのような施設も現に存在している。介護保険20年で生じたケアの質の極端な格差。「国はこの状況を放置するのか」。本間さんは危機感を隠さない。
介護職員らによる高齢者虐待の増加にも歯止めがかからない。
「職員全員が『自分も利用した…
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朝日新聞社会部