ガザ=高野遼
中東パレスチナのガザ地区で、新型コロナウイルスの感染が広がっている。周囲を高い壁に囲われ、10年以上、イスラエルによる封鎖下で経済的に追い詰められてきた。人々の苦境にいま、ウイルスの脅威が追い打ちをかけている。(ガザ=高野遼)
新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、ガザ地区は徹底した対策を取り、記者が内部に入るのは難しかった。朝日新聞は昨年末、10カ月ぶりに内部に入る許可を得て取材した。
ガザ地区中部のヌセイラト難民キャンプ。約8万人が暮らす。立ち並ぶコンクリート造りの建物は壊れた部分も目立ち、屋根にはトタン板が張られている。
家族7人で住むムハンマド・アリさん(48)は「仕事もなくなった。状況は厳しい」と話した。食用のハトを売る仕事で家計を支えてきたが、感染拡大後は人が集まる路上での商売は難しくなった。一家は親戚からの支援でやりくりをする日々だ。長男は大学に進んだが、学費が賄えずに1学期で退学した。「命を守るために厳しい規制は仕方がないが、代わりに経済も仕事もすべて破壊された」
ガザ地区の経済は以前から大きく疲弊していた。テロ組織に指定されるイスラム組織ハマスが実効支配していることを理由に、2007年からイスラエルが封鎖を続けているためだ。面積が365平方キロメートルのガザ地区は壁に囲まれ、出入り口には厳しい検問所がある。約200万人の難民らが10年以上、閉じ込められたように暮らす。
国連によると、イスラエルによる封鎖や攻撃によって07~18年に167億ドルの経済損失があった。外部との物流は制限され、人口の半数以上は貧困によって食料援助などに頼る。そこに新型コロナウイルスの打撃が加わった。元から50%近かった失業率はさらに上昇したと報じられている。
ガザ地区は、「世界で最も人口密度の高い場所の一つ」と言われ、感染拡大が起きやすい環境だ。特に人口密度が高く、衛生環境も悪い難民キャンプで多くの感染者が報告されている。
アリさんの自宅は6畳ほどの部…
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朝日新聞国際報道部