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 天才的なプログラマーとして知られる台湾のIT担当相、唐鳳(オードリー・タン)氏が22日、地方のデジタル化をテーマに山口県の村岡嗣政知事らとオンラインで対談した。タン氏は「遠隔地ほど先端的な技術を取り込むべきだ」と地方のデジタル化の重要性を説いた。

 タン氏は2016年、35歳で民間からIT担当相に登用された。台湾では新型コロナ対策でマスクの安定供給のため配給制が敷かれた。タン氏は近隣の薬局にあるマスクの在庫を確認できるアプリ「マスクマップ」を、民間のプログラマーと協力して開発。コロナの封じ込めに貢献した。

 台湾では高速通信規格「5G」の整備を都市ではなく、地方から先に進めている。対談で理由を聞かれたタン氏は遠隔医療を例に挙げ、「遠隔地でも(医師や薬剤師との)対面のコミュニケーションは必須。遠隔医療が遅れれば問題が山積する。5Gを提供することは命を救うことになる」と語った。自動運転の自動車を活用し、薬の配送も可能になると指摘した。

 また、デジタル化を進める上で必要な人材として「痛みを感じている人に寄り添い、耳を傾ける能力を持っている人」を挙げた。マスクマップの導入にあたって、タン氏は反発する薬局に足を運び、直接意見を聞いたという。「マイナスの感情を受け止めて、前向きな提案をした。地域で対立が生まれたとき、相手の立場に共感できる人間が必要だ」と語った。

 村岡知事は会談後、「デジタル化の取り組みでは失敗して改善を重ねていけばいいという話に勇気をもらった。山口でも市民を巻き込んで課題を解決する手法を試みたい」と話した。(藤牧幸一、山崎毅朗)

スーパー社長が結んだ縁

 オンライン対談は、食品スーパー「マルキュウ」を展開するリテールパートナーズ(山口県防府市)の田中康男社長が中心となって台湾側との交渉を進め、実現した。

 田中社長は1988年に台湾でスーパーの現地法人立ち上げに携わり、現地で数年間の勤務経験がある。帰国後も台湾と交流を続け、2019年には国立台湾師範大学の学生の山口訪問を仲立ちした。

 村岡嗣政知事は昨年10月に全国知事会の「デジタル社会推進本部長」に就き、県政のデジタル化を進める専門部局を4月に設ける方針を示している。対談をきっかけに、県のデジタル化が進めばと、田中社長が昨年末から現地との交渉を進めた。

 対談を終えた田中社長は「県民が暮らしやすさを感じられるように、小売業の立場でできるデジタル化に取り組みたい」と話した。(藤牧幸一)