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 たびたび起きる列車と野生動物の衝突事故を防ごうと、JR東日本八王子支社は山梨県内の中央線の線路沿いの一部に、動物が嫌う音を出す特別な装置を設置した。列車の遅延につながり、多くの乗客に支障が出る事故を回避するため、あの手この手を尽くしてきた中で、最大の効果を期待している。

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 導入されたのは、富士河口湖町の自動車部品販売会社「T・M・WORKS」が製造する「鹿ソニック」と名付けられた装置。動物が苦手とする12~30キロヘルツの高周波音を出す。同社は2017年、野生動物が車とぶつかる交通事故死(ロードキル)を減らそうと、開発に着手し、18年から車の前部バンパーに取り付ける装置の販売を始めた。

 そんな中、同社の轟(とどろき)秀明社長(56)は富士急行から「列車にも活用できないか」と相談を受けた。そこで、18年9月に富士急行線の上大月―田野倉間の2カ所に導入したところ、動物との衝突事故が減少するなど、一定の効果がみられたという。

 JR中央線内でも動物との衝突は相次いでおり、09年からは県内の衝突頻度が高い区間で全長約28キロにわたり、動物の進入を防ぐ柵を設置。18年11月からはLEDの発光で動物を威嚇する機械「クルナレーザー」を導入するなど対策を講じていた。

 しかし、なかなか効果は表れず、中央線高尾―小淵沢間で動物との衝突は17年度69件、18年度77件、19年度108件、20年度は12月までに73件を数えた。このうち、どの年もシカが約7割を占めた。

 富士急行線での実績を受けて昨年12月、八王子支社も鹿ソニックの試験的な導入に踏み切った。初狩―塩山間の13カ所に設置し、今年12月までの1年間、様子を見る。

 この装置には昨年6月、改良が施された。音を放つ角度を60度から100度に広げ、距離も約20メートル長い約70メートルに延ばすことで、広範囲まで音が届くようになった。動物が音に慣れてしまわないように、音の種類も複数に増やした。

 動物の出没は夜間が多いことから、装置を作動させるのは朝や夕方~終電に限定。日中は止める。シカには、鉄分補給のため線路をなめる習性があるので、終電~始発の間も動かさず、あえて鉄分を補給してもらう作戦だ。

 「もし24時間作動したら、別の場所に出没することになり、対策の範囲が広がって追いかけっこになってしまう。動物とうまく共存することが大事ですから」と轟社長。

 八王子支社の担当者は「これでなんとか動物との衝突事故が減ることを願っています」と話す。(玉木祥子)