[PR]

 山形県民が選んだのは、県政の継続だった。12年ぶりの選挙戦となった知事選は24日投開票され、無所属現職の吉村美栄子氏(69)が、無所属新顔の前県議、大内理加氏(57)=自民、公明県本部推薦=を破り、4選を決めた。知名度に勝る吉村氏は12年間の実績を強調し、新型コロナウイルス対応と経済再生を訴えて広く支持された。女性知事の4選は史上最多タイ。県議補選山形市区(被選挙数1)も同日、投開票された。

     ◇

 午後8時、当選確実が伝えられると、山形市城西町4丁目の吉村氏の選挙事務所では歓声が上がった。吉村氏は、支持者らとグータッチして喜び合った。

 吉村氏は目を潤ませながら「これほど早く当選確実が出るとは思わなかった。県民と一緒にコロナを乗り越えていくため一生懸命頑張っていく」とあいさつ。今後の県政運営については「コロナで我慢を強いられている経済や文化活動を再生させるとともに、産業の発展や雇用政策、所得向上に取り組み、県民が真に豊かな生活を送れるようにしたい」と抱負を語った。

 昨春の大型連休中に高速道路や主要駅などで行った「県境検温」、積極的なPCR検査、中小企業への無利子・無担保の融資など、県のコロナ対応を「8割超が評価している」とする陣営の調査を踏まえ「コロナ克服! 山形経済再生!!」を旗印に。告示日の第一声からマスク姿で、屋外での演説を中心に県内を巡った。東北初の女性知事を12年間務めた知名度もあり、各地に人だかりができた。

 公約では子育て費用の段階的な完全無償化を目玉とし、「『子育てするなら山形県』の実現」「『健康長寿日本一』の実現」「県民幸せデジタル化」「『1人当たり県民所得』の向上」「やまがた強靱(きょうじん)化」の5本柱を掲げた。1人当たり県民所得の順位や生産農業所得、高速道路整備率の上昇などの実績も織り交ぜ、「停滞している」とした大内氏の批判に反論した。

 国民民主の舟山康江、無所属の芳賀道也の両参院議員が応援し、「県政クラブ」の県議らが支えた。立憲民主、共産、国民民主の各党県組織も自主支援。連合山形に加え、JAグループの政治団体「県農協政治連盟」も「実績は申し分ない」として推薦し、農業票も取り込んだ。

     ◇

 《解説》選挙戦がコロナ禍で行われたことが、現職の吉村氏に有利に働いた。

 告示日に首都圏を対象に再び緊急事態宣言が出され、その後に対象区域は拡大。各地で新規感染者の過去最多更新が続いた。一方の県内は昨年11月以降に感染者が急増したが、今年に入って増加のペースは落ち着いている。ほかの都道府県と比べて感染者が抑えられている現状で、昨春の「県境検温」など吉村氏のコロナ対応が一定の評価を受けたといえるだろう。

 一方の大内氏は、コロナ禍で選挙活動に制約を受け、3期務めた吉村氏との知名度の差を縮めることができなかった。とはいえ、吉村県政が初めて県民の審判を仰ぐ機会になった今回、若い女性の県外転出率の高さなど県政課題が浮かび上がった意味では、選挙戦になった意義は大きい。

 また、吉村氏と首長同士の立場で協力してきたはずの県内13市長のうち、8市長は大内氏を推薦。国や市町村との連携に欠けるとの吉村氏への批判の一端が垣間見えた。3月からはコロナのワクチン接種が始まる。吉村氏はコロナ対応を含む様々な課題に国、市町村としっかり連携して臨むべきだ。(三宅範和)

     ◇

 約100人が詰めかけた山形市流通センター2丁目の大内氏の選挙事務所は、吉村氏の当選確実が伝えられると静まりかえった。吉村氏陣営が万歳をするネット中継を見つめる姿もあった。

 約10分後に姿を見せた大内氏は深々と頭を下げた後、「県の現状や課題をお伝えでき、山形県が一歩でも前に進む大きなきっかけになったと思う」とあいさつ。吉村氏に対しては「県民のためにしっかりかじ取りをしてほしいとエールを送りたい」。最後に「本当に申し訳ありません」と述べると、支持者から「よくやった」と拍手が送られた。

 選対本部長を務めた遠藤利明衆院議員は「信じがたい思い。これからの山形というより、コロナに対していま一番大切なことは健康だという県民の判断だったのだろう。しっかりと我々も受け止める」と述べた。

 大内氏は選挙戦で、現県政を「中央と連携する姿勢」に欠けると批判し、国と連携した県政の実現を訴えた。人口減少が続く現状から「選ばれる山形へ」をキャッチフレーズに掲げ、子どもが生まれた世帯への給付金制度などを打ち出したが、コロナ禍で大規模集会を開きにくい中で知名度を伸ばしきれなかった。

     ◇

 山形県選挙管理委員会によると、投票率は62・94%だった。直近で選挙戦となった2009年の65・51%を2・57ポイント下回った。

 市町村別にみると、投票率が最も高かったのは、大蔵村で79・85%、西川町の79・57%が次いだ。最も低かったのは、09年と同様に酒田市で57・99%。05年まで5回連続で最も低かった米沢市が次いで低く、58・57%だった。

 また、県選管は期日前投票の最終結果も発表。告示翌日の8日から開票前日の23日までの16日間に投票したのは、有権者の23・69%にあたる21万5186人。09年の9万3667人の2倍以上になった。県選管は期日前投票者が増えた理由について「制度が浸透したことや、新型コロナウイルスの感染防止対策として、投票所での密を避けたのではないか」とみている。

関連ニュース