「ここぞの時に生きるのは、考え抜いた経験」 巣鴨校長

校長から受験生へ

聞き手・川口敦子
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 入試シーズンが本格的に始まりました。コロナ禍の中で頑張っている受験生たちへ、校長たちからの言葉をお届けします。

校長から受験生へ:巣鴨中学・高校の堀内不二夫さん

 受験生に言いたいことは三つです。おたおたするな。やるべきことをやろう。家族とは仲良く。受験がすべてではないですが、そこに目標を定めて一生懸命になれるいいチャンスです。試験が終わるまでは、決して諦めないでほしい。

 とはいえ、受験生全員が第1志望の学校に合格できるわけではありません。でもね、行った学校がいい学校なんです。行きたかった学校は、もちろんいい学校でしょう。ただ、行った学校が一番いい学校なんです。受験は将来に向けてのステップであり、関門ですが、その先、何十年という時間を過ごすわけですから。そこで燃え尽きても困るし、つまずいて萎縮するのも、もったいない。

 偏差値や進学実績で学校が評価されがちですが、進学後、どんなことを学んだかによって、数字では表せない価値を見いだせる。それを作り出すのは自分です。物事を判断する時、事実に基づいて考えることが必要ですが、今は情報が氾濫(はんらん)していて「確かなこと」を切り取る力が問われます。確かに見えること、確かだと思い込んでいることが邪魔をするからです。冷静にこれらを取り除くには、思考を重ねることです。

 「今年度はコロナ禍で受験生は大変だ、かわいそうだ」という話をよく耳にします。制約が多かったのは事実でしょう。でも、受験生自身はどう思っているでしょうか。世間がそういう目で見ることで、大変なんだという空気が作られているように感じます。皆さんは、もっとたくましいはずです。周りの声に振り回されず、自分の視点を大切にしてほしいと思います。

 早朝の寒稽古や、未明に歩き始めて峠を越える「強歩大会」。本校には伝統の学校行事があり、それに魅力を感じて受験してくれる生徒が少なくないですが、残念ながら今年度はできませんでした。それでも日々の習慣は崩してほしくなかったので、クラスを2分割しての分散登校の時期は、授業のみならず、休み時間もホームルームも同時配信しました。生活のリズムを維持することが大切なのは、受験生にも受験を終えた人にも、共通して言えることです。

 インターネットで検索すれば、すぐ答えにたどり着く気がするでしょう。反応が早い子は多くなりました。でも、ここぞの時に生きるのは、試行錯誤して自分で考え抜いたという経験だと思います。専門性を追求するのも大事ですが、それ以上に、ベースとなる教養をまず身につけてほしい。本を読んで、人と触れ合う。色々な世界があることを知る。受験をいい機会に、思考の過程を大切にして下さい。(聞き手・川口敦子)

     ◇

 1947年、東京都生まれ。巣鴨中学・高校卒業後、早稲田大学大学院(経済学)修了。巣鴨中・高で社会科教諭を務め、2007年、第5代校長に就任した。