バイデン大統領 トランスジェンダーの米軍入隊禁止撤回
バイデン米大統領は25日、体と心の性別が一致しない「トランスジェンダー」の人たちが米軍に入隊することを認める大統領令に署名した。オバマ元政権でいったん入隊が認められ、トランプ前政権が禁じたが、再び覆した。「多様性」を重視するバイデン政権の施策の一環で、当事者から喜びの声があがった。
バイデン氏は署名にあたって「すべての資格のある米国人が制服を着て、国のために尽くせるようにする」と述べた。ホワイトハウスは声明で「ジェンダーへの認識が軍務の障害になるべきではない」と強調し、オースティン国防長官も「正しいだけでなく、賢明な措置だ」と評価した。
米シンクタンク・ランド研究所の推計では、トランスジェンダーの現役軍人は2016年時点で数千人いた。しかし、トランプ前大統領は17年、「米軍は圧倒的な勝利のために集中しなければならず、トランスジェンダーの受け入れに伴う医学的コストや混乱の負担は受け入れられない」などとして、入隊を禁じた。
カリフォルニア州の空軍基地で働くスターリング・クラッチャーさん(32)は女性として生まれ、現在は男性として生きる。バイデン政権の決定について「10トンの象が背中から降りるような感じだ」と語る。軍人だった祖父に憧れ、15年8月に入隊。オバマ氏がトランスジェンダーの入隊を正式に認める直前の16年2月ごろ、周囲に自らの性についてカミングアウトした。
「軍人に重要なことは、共通の目標に向けて協力すること」と考えていただけに、入隊禁止の措置は苦しかった。長く、不安に襲われた。働き続けられるだろうか。もし働けても、昇格できるだろうか。軍を離れる覚悟もしたが、幸いなことに多くの上官が受け入れ、支援してくれた。「ようやく将来、キャリアに光が差した。この多様性が私たちだけでなく、後に続く人たちにとっても、ずっと続いてほしい」(ワシントン=渡辺丘、ニューヨーク=藤原学思)
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