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 自衛隊員の自殺者に関する文書の開示請求に対し、防衛省が一部を不開示としたことは情報公開法に反するとして、札幌市の弁護士が自殺者の氏名をのぞく部分の開示を求めた訴訟の判決が26日、札幌地裁であった。谷口哲也裁判長は自殺した隊員の入隊後の年数や海外派遣歴、自殺方法や遺書の有無など22項目の開示を命じる判決を言い渡した。一方、年齢や性別、所属などについては請求を退けた。

 原告は佐藤博文弁護士。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣は憲法違反だとして、北海道千歳市の陸自隊員の母親が訴えた訴訟で弁護団長を務めている。

 判決によると、佐藤弁護士は2017年8月、北海道全体を管轄する陸自北部方面隊の自殺者について、01~16年の年度ごと、駐屯地ごと、年齢、未婚・既婚の別に関する文書を開示請求した。防衛省は17年10月、「特定の個人が識別され、または識別できないが個人の権利利益を害するおそれがある」として、ほぼ全面黒塗りで開示した。

 判決は、入隊後の年数や海外派遣歴、出身、既婚か未婚かなどの項目について「個人の特定に資する程度が一般的に弱く、どのように個人特定につながるか具体的に明らかではない」などと指摘。「備考」欄に記載された遺書の有無についても「遺書の内容とは異なり、個人の人格的利益と密接に関連するとはいえない」と判断した。

 一方、所属部隊や自殺した場所などは、他の情報と照合することで個人を識別することができるとして訴えを退け、「備考」欄の自殺の遠因についても、個人の人格的利益と密接に関連するとして、開示を認めなかった。

 判決を受け、佐藤弁護士は「黒塗りの文書がいかに不条理、不合理だったかが認められた」と評価する一方、「他の省庁の情報公開のレベルまで認めさせたい」と述べた。控訴については今後、検討する。

 この裁判では、佐藤弁護士は陸自北部方面隊がイラク派遣や南スーダン派遣でたびたび中心を担ったと指摘し、文書には隊員への安全配慮義務に関する重要な情報が含まれていると主張。「隊員のプライバシー保護のためなら、氏名を非開示にすればよく、人数や所属、年齢などまで隠す必要はない」と訴えていた。

 国側は請求棄却を求めていた。防衛省は「国の主張が一部認められなかったものと受け止めている。今後の対応は、判決内容を慎重に検討し、関係機関と十分調整のうえ適切に対応していく」との談話を出した。(前田健汰、磯部征紀)