院長解任した旭川医大学長「動物的な勘、間違ってない」

新型コロナウイルス

井上潜、本田大次郎、原田達矢
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 旭川医科大学(北海道旭川市、吉田晃敏学長)が付属の旭川医科大学病院の古川博之院長を解任した問題で、大学は26日、記者会見を開いて理由を説明した。学内の会議の内容を外部に漏洩(ろうえい)したことや、新型コロナウイルス患者の受け入れを巡る吉田学長とのやり取りを恣意(しい)的に報道機関に話して混乱を生じさせたことなどを理由に挙げた。古川院長はいずれも否定している。(井上潜、本田大次郎、原田達矢)

 会見には吉田学長のほか、理事の松野丈夫氏、平田哲氏と顧問弁護士の福田俊彦氏が出席した。

 福田弁護士によると、当事者の吉田学長を欠席させた15日の臨時役員会で、古川院長に情報漏洩などの事実関係を確認。古川院長は否定したが、「複数の証言で事実を認定した」として自主的な辞任を求め、22日までに回答がない場合は解任する、と役員会の総意として通告したという。

 古川院長は「具体的な証拠はない」と主張して解任された。福田弁護士は「裁判で状況証拠や間接証拠から事実を認定することはいくらでもある」「昨年末から事実確認を進めており、役員会としてはこれ以上判断することはない」と話した。問題に関する吉田学長の責任については、週内にも学長選考会議を開いて検討するという。

 吉田学長を巡っては、クラスター(感染者集団)が発生した市内の吉田病院について「コロナを完全になくすためには、あの病院(吉田病院)が完全になくなるしかない、ということ」と発言したとされる。また、吉田病院からのコロナ患者受け入れを許可せず、古川院長によると、「受け入れてもいいが、代わりにお前がやめろ」と発言したという。

 吉田学長はこの日の会見で、「完全になくなるしかない」などの発言については、「あのときの真意は吉田病院のコロナがなくなればいい、という趣旨だったが、切り取られて誤解を与えた。誤解を与えてしまったことをおわびする」と述べた。

 ただ、患者受け入れを許可しなかった判断は、「動物的な勘」だったとし、「僕の判断は間違っていなかった」と主張した。古川院長に辞任を迫ったとされる発言について、「パワーハラスメントでは」との指摘が出ていることについて福田弁護士は「医大病院では当時受け入れ体制が整っていなかった。吉田学長が古川院長の目の前で旭川市幹部に電話をかけ、幹部から『医科大学の出番ではない』と明確に回答されたものであったことを踏まえると、役員会としてはパワーハラスメントとは判断しない」と述べた。

 吉田学長は古川院長との対立が解任にまで至ったことについて、「本来なら学長がいてその下に病院長がいる。明確な上下関係がある。前の院長やその前の院長とはスムーズなコミュニケーションが取れていた」とし、古川院長が報道機関の取材に応じて発言したため「今回はまったく分からないことが進んでしまい、大学が混乱した」と主張した。

会見、吉田学長の一問一答

 会見での吉田晃敏学長との主なやり取りは次の通り。

 ――会見冒頭での謝罪は何に対するものだったのか。

 「11月17日の学長と副学長の会議において、私の『吉田病院がなくなればいい』というような内容の発言が強調されて切り取られ、多くの方に誤解を与えてしまった。このことは事実なのでおわびしたい」

 「11月8日と13日に私はある病院からの軽症者を断った。それは、私の教員として培ってきた知識と動物的な勘でそういう対応を取った。その後はコロナ対応の病床が32床使えるようになったことからも、(当時許可しなかった)私の判断は間違っていなかった」

 ――院長の解任で信用を失墜させたのでは。

 「学長と病院長は明確な上下関係にある。今回は病院長の行動が先行し、状況がわからないまま進んでしまった。職員にも伝わらず大学内で混乱が生じた」

旭川医大1期生、長期14年学長の吉田氏

 吉田晃敏学長(68)は旭川医大の1期生で、1979年卒。眼科が専門で、釧路赤十字病院眼科部長、旭川医大講師などを経て、92年に同大教授。情報技術を活用した先進的な研究開発を手がけ、遠隔医療の普及に力を入れたなどとして総務大臣表彰などを受けた。

 2007年の学長選で同大出身者では初の学長となった。その後14年にわたって学長に就いている、職員の給与改革など大学病院の経営改善に取り組む一方、19~20年には教授の不正報酬問題など不祥事が続き、管理体制が問われた。

院長「地域医療をないがしろに」

 旭川医大病院の院長を25日付で解任された古川博之院長は同日夜、報道関係者向けにコメントを出した。

 「本日、病院長の職を解かれました」との言葉で始まる文書で、古川氏は解任に至る経緯を説明。15日に医大の役員会から辞任を求められたが、「解任相当とする具体的事実が事前に告知されておらず、告知・聴聞の手続きにおいては不適正」「ヒアリングでの質問内容は十分な反論も受け入れず、結論ありきのもの」と批判。役員会が指摘する情報漏洩(ろうえい)の疑いも否定したとし、「不利益処分を基礎付けるような具体的証拠は何もない」とした。

 さらに、文部科学省が吉田学長の不適切発言問題などで旭川医大を調査しているさなかに院長辞任を求めるのは、「真実隠しと思わざるを得ない」とし、旭川市の病院の新型コロナウイルス対策で「リーダーシップをとってきた私を解任することは、地域医療をないがしろにしている」とも指摘した。そして、「このような理由から辞任勧奨を拒否」し、「その結果、本日解任ということになりました」と結んでいる。

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