滋賀にもある空也上人像、口から出る小仏の跡も

主任学芸員 和澄(わずみ)浩介
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 西国三十三所に数えられる京都・六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)の空也上人立像は、口から6体の阿弥陀(あみだ)如来(にょらい)が現れる特異な姿から全国的に著名です。実はこのような姿の空也上人像は、重要文化財では他に3体あります。荘厳寺の像はそのひとつで、鎌倉時代にさかのぼる貴重な像です。

 空也は平安時代中期の僧で、庶民のために市中を巡って念仏を広めたため「市聖(いちのひじり)」と称された人物です。

 痩せて肋骨(ろっこつ)が浮き出し、粗末な僧衣に身を包んだ姿は清貧を旨とした空也上人の人柄をよく表しています。そして、実は念仏を唱える口元には針金を挿した痕跡が残っています。おそらく、六波羅蜜寺の像と同様に「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」の6字が小さな6体の阿弥陀如来となって口から出現した様子を表したのでしょう=図。奇跡が起きる瞬間を示す迫真の表現です。

 荘厳寺の像は各地を巡ったと伝わる空也が、近江の市中でも念仏を唱えながら歩く姿を想像させてくれます。

 また、空也は都で疫病が流行した際に十一面観音像などを供養し、盛大に病魔退散を祈願しました。一心に念仏を唱える空也の表情は、現在の私たちが伝染病の沈静を祈る姿にも重なります。(主任学芸員 和澄(わずみ)浩介)