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 安産祈願で知られる東京都中央区の水天宮は26日午後、マタニティーマークをつけた女性やその家族でにぎわっていた。ふっくらとしたおなかを大事そうになでたり、家族でそろって記念撮影をしたり。この日は、12日に一度めぐってくる「戌(いぬ)の日」。多産で安産の犬にあやかり、昔から多くの人が参拝する。

 「これでも例年よりは少ない方です」と権禰宜(ごんねぎ)の大堀晃子さん。コロナ禍で、参拝にこられない人のための「お預かり祈禱(きとう)」やお守りの郵送も増えているという。「こういう状況だからこそ、お祝い事を大事にしたい方は多いのだと思います」

 日野市から来た自営業、斉藤正利さん(62)は、コロナ禍であまり遠出ができない長男夫婦に代わって参拝に来た。長男夫婦は6月に第1子を出産予定で、斉藤さんにとって初孫となる。「最初はお嫁さんの体調が心配だったが、安定期に入り、『楽しみ』の気持ちが強くなってきました」。これから妻とともに、安産のお守りである腹帯(御子守帯)を届けに行くという。

 目黒区の仲田明日香さん(27)は妊娠5カ月で、夫と義母とともに訪れた。妊娠がわかった昨秋は、新型コロナウイルスの感染者数が再び増え始めた時期で、不安もよぎったという。

 特に悩んだのが里帰り出産について。コロナ禍でなければ里帰りするつもりでいたが、感染状況などを考えると「帰るに帰れない」と感じた。夫と相談し、夫の実家がある東京で出産することにした。「不安もありますが、それはほかの妊婦さんも同じ。心配事ばかり言っていても仕方ないかなって」

 水天宮はいま、感染対策として建物内に入る人数を制限し、祈禱も参拝者である妊婦か代理のいずれか1人で昇殿するようにしている。仲田さんも、安産祈禱は他の妊婦らとともに1人で受けた。「赤ちゃんが元気に産まれてほしい。それだけです」

 取材中、参拝する人の列は途絶えることなく続いていた。無事の出産を願って、我が子の健康を願って、安心して暮らせる世の中を願って――。どの人も深々と頭を下げ、手を合わせていた。(塩入彩)