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 「においで文学作品を読む」というテーマに取り組んでいます。嗅覚(きゅうかく)は、五感の中でも文学との親和性がとても高い。映像で簡単に再現できる視覚や聴覚とも、必ず直接接触することが求められる味覚や触覚とも異なる嗅覚のあいまいさが、文学を読むときの想像力とフィットするからです。

 においが本能的な要素をはらんでいることも、文学とにおいの関係では重要です。私たちは普段、自分のにおいを隠しています。隠すべきものとされるにおいには、どこか背徳的なエロチシズムがあります。明治・大正期の文豪の田山花袋(かたい)の代表作「蒲団(ふとん)」には、主人公の作家が、いなくなった女弟子の蒲団のにおいをかぐ場面があります。あの場面を読むと、文化的な人間として生きている私たちが普段は隠している本能の世界に戻されるような、のぞき見したような感覚があるのではないでしょうか。

 数年前、太宰治の「人間失格」…

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