屋根からの雪下ろしに足すくむ 東京出身記者が除雪体験

曽田幹東
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 記録的な大雪に見舞われた秋田県南を中心に、住民は連日、除雪作業に追われている。作業は危険を伴い、雪害事故は昨年の30倍に達している。29日から再び大雪の予報で事故の増加も心配される。除雪がどれだけ危険できついのか。東京出身の記者(43)が体験した。

 23日、最初に向かったのは横手市大森町の山あいの集落で、空き家の雪下ろしだった。平均年齢70歳という保呂羽(ほろわ)地区自治会のメンバー6人と、ひざ上まである屋根の雪を下ろした。

 住民の依頼はこの冬70件を超えたという。少雪だった昨冬はわずか3件。今年は例年よりはるかに多く、自治会長の守屋裕一さん(69)は「ボディーブローのように疲れがたまってくる」と苦笑いした。

 スコップで雪に十字に切れ目を入れて軒下に投げる。雨を含んだ雪は想像以上に重く、腰にきた。作業が進んでトタン屋根がむきだしになると、今度は足が滑りだした。滑らないように足場に少し雪を残すのがコツだと教えてもらった。

 息が上がってくる頃合いを見計らって守屋さんが「休憩しよう」と声をかけてくれた。屋根上から冬晴れの空を眺めた。

 作業後、軒下で守屋さんからコーヒーとせんべいが振る舞われた。「このためにやってんだよな」とメンバーが笑った。近所の人が鍋で温めた缶コーヒーを人数分持ってきてくれて、さらにもう1杯いただいた。

 2棟目はひとり暮らしの80代女性からの依頼で、2階小屋の屋根に上った。4メートルほどの高さがあり、足がすくんだ。

 転落など除雪中に起きる事故は多い。今冬の雪害による死傷者は24日時点で188人(そのうち死者18人。県警調べ)。県警はヘルメットや命綱に加え、生き埋めになった場合に備え、除雪中も携帯電話を常に持つように呼びかけている。自治会のメンバーも危険性は熟知しており、事故に備えてヘルメットに自分の血液型を書いていた。

 自治会は8年前に発足した比較的新しい組織だ。家族や親族に頼って乗り切ってきた除雪も、人が減ったため、地域で助け合う「共助」の仕組みが必要になった。依頼を受けると、雪寄せの場合は1人1時間600円、雪下ろしの場合1200円をもらう。ただこうした共助組織への支援は限定的だ。横手市によると、スコップなどの消耗品には補助があるが、人件費は対象外だという。

 この日の作業は大人数でやったため、2件とも1時間ほどで終わった。だが1人なら丸1日かかるだろう。疲れもたまり、事故の可能性も高くなる。その意味でも、自助ではなく共助の仕組みの活用がますます大事になると思った。

 雪下ろしは危険を伴うため、未経験者の参加は難しいが、家周りの雪寄せをボランティアとして手伝う方法もある。雪下ろし後、横手市社会福祉協議会の活動にも同じく体験取材として参加させてもらい、地元の平成高野球部の部員らと雪寄せをした。

 現場である同市平鹿町の築約60年の家の両脇には、屋根の高さまで雪が積もっていた。住人の滝沢京子さん(89)はひとり暮らし。神奈川で働く長男は新型コロナウイルスの影響で休日も帰れない。近くで暮らすおいの政勝さん(72)が1人で何度も除雪してきたが、あまりの雪の量に社協に助けを求めた。「こんな雪は四八(よんぱち)豪雪(1973~74年の大雪)以来」という。

 積もった雪を削り、道路反対側の雪捨て場にスノーダンプで運ぶ。雪捨て場の傾斜をスノーダンプを押して上らなければならず、息もたえだえになった。

 約2時間の作業で雪に埋もれていた家の窓が見えるようになった。京子さんは「家の中が真っ暗だった。涙がでるほどうれしい。別世界みたい」と喜んだ。

 社協によると、今年は新型コロナの影響で県外からのボランティアは断っていて、登録者数が伸び悩んでいる。1件あたりに派遣できる人数も例年の6割程度という。ボランティアは現在も募集中だ(電話0182・36・5377)。

 私は案の定、翌日の日曜日は背筋痛で寝込んでしまった。でも除雪後の依頼者の笑顔を思い出すと、少しでも力になれて良かったと思えた。(曽田幹東)