米国での議会襲撃事件をめぐり、トランプ前大統領のSNSのアカウントが凍結されました。これを受け、SNS規制についての議論が欧米で高まっています。米国で注目されている法律が、「通信品位法230条」です。企業が利用者の投稿内容を放置したり、逆に削除したりしても原則として法的責任を負わない、とする内容です。ツイッターやフェイスブックなど米IT大手の成長を下支えしたと言われるこの条文はなぜ作られ、どんな問題点が指摘されているのか。また230条が改正されると、企業や利用者にはどのような影響が出るのか。情報法に詳しい中央大国際情報学部の小向太郎教授に聞きました。
――SNS規制の議論でよく耳にする「通信品位法」とはそもそもどのような法律なのですか。
ネット上における、18歳未満の人へのわいせつや暴力的な内容など不適切な情報の提供を規制する法律で、1996年に成立しました。その名の通り、品位に欠ける内容を故意に提供することを禁じたものです。ただ、憲法で定める「表現の自由」に反するとして成立後すぐに提訴され、その一部が違憲判決で無効となりました。
――その中で230条は何を規定しているのですか。
230条はSNSや掲示板を運営したり、ウェブ関連のサービスを提供したりする企業を対象に①第三者が発信した情報への責任を原則問わない②問題があると判断した情報を自主的に削除などしても善意であれば責任を問われない、と定めています。
――企業にはどのような影響がありましたか。
米国は訴訟大国ですが、この規定によって企業は第三者の発信した内容への訴訟リスクが大幅に減り、訴訟費用などのコスト削減につながりました。SNSを始めとする米IT大手の成長の基盤となったと言われるのはこのためです。例えば、グーグルの検索結果の削除を求める訴訟は、米国では多くありません。230条で門前払いになることが判例で明らかだからです。
――日本や欧州とはどのような違いがありますか。
例えば、SNS上に明らかに…