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 米沢工業高校(山形県米沢市)専攻科1年の我妻花音(かのん)さん(19)が、同市の伝統工芸「原方刺し子」を生かしたビジネスプランをまとめ、学生が参加するコンテスト「キャンパスベンチャーグランプリ」の東北大会で最優秀賞を受賞した。我妻さんは東北代表として29日の全国大会に出場する。

 原方刺し子は、江戸時代に米沢藩の下級武士の妻らが始めたとされる。布地の保温と補強のために糸で細かく刺し、美しい文様には夫の出世や子どもの健康への願いなどを込めたという。現在は原方刺し子作家の遠藤きよ子さん(81)=同市門東町1丁目=がただ一人、技術を守っている。

 生産デザインコースで学ぶ我妻さんは昨春、遠藤さんの工房「創匠庵(そうしょうあん)」を訪れ、遠藤さんに後継者がいないことを知った。同校の元講師らが設立した「『原方刺し子』を伝承する会」にも参加。代表的な文様約60種をデジタル化したり、オンラインで開いた米国在住の女性への遠藤さんの講習会を手伝ったりした。

 我妻さんの作ったプランは「守れ、繫(つな)げ! 原方刺し子の400年の思い」。気軽に楽しめる「刺し子キット」を販売し、技術の伝承も目指すものだ。

 遠藤さんは約30分かけて布に図案を描くが、デジタル化した図案を布に印刷すれば1分ほどでできるという。「nuku(ぬく) nuku(ぬく)」と名付けたキットは、図案が印刷された布や糸、裏地などをセットにした。コースター作りが楽しめる初心者用で、1セット800円での販売を想定する。

 我妻さんのプランでは、キットの製造や販売を手がけるベンチャー企業を立ち上げ、まずは高齢者に手作業が認知症防止につながるとアピール。また、オンライン講習会のビジネス化や、オーダーメイドによる原方刺し子の受注販売も想定している。2年目以降は全国に市場を広げ、黒字化を図るという。

 21日に創匠庵で我妻さんから受賞を報告された遠藤さんは「若い人が考えてくれてありがたい」と喜んだ。我妻さんは「原方刺し子を通し、世代を超えて人と人が結びつく社会の実現を目指したい」と話す。

 1999年に始まったキャンパスベンチャーグランプリは「学生起業家の登竜門」として知られ、出場をきっかけに起業する学生もいるという。全国8地域の代表が参加する全国大会は29日にオンラインで開かれる。(石井力)

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