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 東京在住の写真家石田郁子さん(43)が28年前、当時通っていた札幌市の中学の50代の男性教諭に性暴力を受けたと訴えていた問題で、札幌市教育委員会は28日、この教諭を懲戒免職とする処分を発表した。石田さんが市と教諭を訴えた民事訴訟で昨年末、性的行為の事実が認められたことを受け、市教委も中学時代のわいせつ行為を認定。処分に踏み切った。教諭は「事実誤認だ」などと反論している。

 市教委の発表によると、男性教諭は石田さんが中学3年生だった1993年から約2年にわたり、教諭の自宅でキスをしたほか、学校内で胸を触ったり、車の中で上半身の服を脱がせたりするなどのわいせつ行為を行った、と認定。「児童生徒へのわいせつ行為は懲戒免職とする」との規定に基づき処分を決めた。

 市教委の紺野宏子教職員担当部長は会見で「寄り添った対応ができなかったことに対し、被害に遭われた女性に心からおわび申し上げる」と謝罪した。

 石田さんは教諭の行為を性暴力と認識した2016年2月、市教委に懲戒処分を申し立てた。市教委は石田さんと教諭に複数回にわたって聞き取り調査を行ったが、教諭はわいせつ行為を強く否定。市教委は事実認定ができないとして、処分しなかった。

 石田さんは同年に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。19年2月に札幌市と教諭を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。昨年12月の東京高裁判決では、損害賠償を請求できる期間が過ぎているとして訴えは棄却されたが、性的行為の事実は認定。今月5日に判決は確定した。

 市教委は判決で事実認定されたことを重視し、教諭に再度聞き取りを実施した。教諭は今回の調査でも事実を否定し、反論する書類も出した。しかし市教委は「当時の状況からそうした行為をできる環境になかった、と列挙するにとどまる」(烝野直樹教職員課長)とし、高裁の認定を覆すには至らないと判断した。

19年度は273人を処分

 こうした厳しい処分の背景にあるのは、児童生徒への教員のわいせつ行為が後を絶たない現状がある。

 文部科学省によると、19年度にわいせつ行為やセクハラをして処分された公立小中高校などの教職員は273人。過去最多だった前年度に次いで多かった。このうち児童生徒に対するわいせつ行為は半数近い126人で、121人が懲戒免職となった。

 昨年12月には、兵庫県教委が15年前に勤務先の高校の女子生徒と複数回性行為をした男性教諭を懲戒免職処分とした。発覚のきっかけは、2018年にこの女性から県教委に寄せられたメールだった。刑事処分と違って、懲戒処分などを定める地方公務員法に時効の規定はない。

 文科省は、子どもへのわいせつ行為は原則として懲戒免職とするよう自治体などに求めている。だが、過去には懲戒免職となった教員が処分歴を隠して別の自治体に採用され、新たな被害につながったケースもあった。そうした教員が採用されないようにするため、文科省は官報に掲載された懲戒免職処分の情報を検索できるツールを自治体に提供している。近く省令を改正し、過去3年間としていた検索期間は40年間に拡大する。懲戒免職が子どもへのわいせつ行為によるものであることも判別できるようにする。

 一方、文科省は子どもへのわいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員が免許状を再取得できないようにする法改正も検討していた。だが、社会復帰や更生の観点から、刑の執行後原則10年で刑が消滅すると定めた刑法との整合性が取れないと判断し、今国会での法改正は見送った。

 萩生田光一文科相はこれまでも繰り返し対策の必要性を強調。昨年末の記者会見では「わいせつ教員を二度と教壇に立たせないという思いは貫いていきたい」と述べた。(芳垣文子、鎌田悠)

教諭側「反論の機会、十分でない」

 男性教諭の代理人を務める弁護士は28日、札幌市教委あてに処分は不当とする意見書を出した。教諭側は、事実誤認がある判決を根拠に処分されたと問題視。「教諭は裁判で十分な反論の機会を与えられていない。市教委は裁判の事実認定をうのみにせず、独自に証拠を集め、事実関係を慎重に認定し、処分すべきか判断しなければならない」と訴えた。

 意見書によると、石田さんが教諭を訴えた裁判は、被害から20年が経過したため賠償請求権が失われたとする除斥期間を理由に石田さん側の敗訴が確定した。石田さんが訴えた被害の有無について、地裁、高裁で教諭への尋問の機会はなかったといい、十分な審理対象にならなかったとする。

 そのため、教諭が1993年、学校の専科準備室で石田さんの体を触るなどしたとする行為について、「準備室には日常的に同僚の教諭が喫煙に来ており、行為はなかった」などと反論できなかったと主張。一連の行為を認定した高裁判決は事実誤認としている。(山本亮介

■「信頼する教師、疑…

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