選抜出場の北海、スキーで鍛えた柔軟性 あのプロも実践

高校野球

能田英二
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 10年ぶりに春の選抜高校野球大会への出場を決めた札幌市の北海高校には、冬の北海道ならではの名物メニューがある。クロスカントリースキーだ。同校OBの鍵谷陽平投手(日本ハム―巨人)も実践していたというトレーニング方法だ。

 クロスカントリースキーを採り入れている野球部は、北海道とはいえ珍しい。雪が積もったグラウンドで、数字の「8」の字を大きく描くような形のコースを滑る。

 1周およそ150メートル。白い息を吐きながら、両足を前後に大きく広げるように滑ったり、腕力だけを頼りに滑ったり。それを8~10周する。

 スキーに親しんでいる道内出身者でも、この平地のスキーは苦戦する選手が多い。バランスを崩して転倒したり、後続に追い抜かれたりする光景が見られる。

 1998年に就任した同校OBの平川敦監督(49)が、就任して数年後から採用している。北海道東部の厚岸町出身で、夏は野球、冬はスケートに親しんできた。その経験から、「体の使い方や身のこなしを覚えるのには野球だけをやっていても……。色んな競技には共通する動きがあり、それが野球にもつながる」と話す。

 最近の選手は股関節や足首の関節が硬いことが多く、柔らかくさせるのが狙い。可動域が狭いままだと負傷の恐れもあるからだ。ストックを使うので、肩甲骨の動かし方も大切だ。全身運動とあって心肺機能の強化にも役立つと、良いことずくめだ。

 エースの木村大成投手(2年)は1年前にはスキー操作に戸惑っていた。「最初は転んでばかり。体全体を使わないとうまく滑れない。ふくらはぎ、太もも、腕が筋肉痛になります」。4番打者で遊撃手の宮下朝陽主将(同)も「守備では股関節の柔らかさが必要。可動域が広がり、野球に生きると思う。好きなメニューだって言う選手は少ないんですけど……」と感想を語った。

 北海は近年、プロ野球入りする選手もいる名門だ。巨人の鍵谷投手もクロスカントリースキーで鍛えられたひとりだ。2008年夏の甲子園で鍵谷投手とバッテリーを組んだ立島達直部長(30)は「鍵谷はスキーがうまく速かった。何よりプロに行くくらいですから身体能力や馬力が抜群で、野球への取り組み方も素晴らしかった」と高校時代を懐かしむ。

 北海の野球部ではスキー以外にも、体育館でバスケットやバレー、バドミントンなどを行うこともあれば、綱のぼりのメニューもある。多種多様なトレーニングで強化に励む。

 新型コロナの影響もあり、選抜大会前に予定する本州での強化合宿ができるかも未定で、ボールを使える練習時間は限られている。平川監督は「北海道の特性を生かして冬のトレーニングをする。それが夏に生きることがある」。冬を野球選手の土台づくりに充てている。

 スキーの持つ強化の効用について、リレハンメル冬季五輪複合団体の金メダリスト阿部雅司さん(55)=現札幌オリンピックミュージアム名誉館長=に話を聞いた。阿部さんは「ランニングに比べ、スキーは上半身も使うため、心拍数が2~3割アップし、カロリー消費も2~3割増す」と説明する。「体幹がしっかりしないとスキー板にうまく乗れず、滑れない。知らないうちに筋トレになるし、走るよりひざへの負担も少ない」。北海道ならではの練習として理にかなっているという。(能田英二)