市教委が「感染、身内にも他言無用」指導 識者は疑問視

木脇みのり、稲野慎
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 鹿児島市教育委員会が、新型コロナウイルスの感染者を確認した市立学校に対し、児童生徒らがPCR検査を受けたり感染したりした事実を保護者らが他言しないよう求める文書を送っていたことが分かった。市教委は29日、「感染者への誹謗(ひぼう)中傷を防ぐためだった」と説明する一方、「配慮が足りなかった」として内容を改めるとした。

 市教委によると、文書は児童生徒の感染が分かった学校に昨年10月ごろから発出。保護者らに口頭で伝える依頼内容の「参考」として、感染者の発生や検査について「身内をはじめ、他の学級・学年の生徒及びその保護者、地域住民への他言はしない」と明記していた。学校から保護者に対してその内容が電話で伝えられたという。

 「身内」の意味について市教委は、「親戚や友人も含め、検査のことを話すような親しい人」と説明。検査を受ける子どもの保護者が感染などの事実を友人や親戚に伝え、メールなどで無関係の人にも拡散した事例があるという市保健所の助言も参考にしたという。

 29日の定例会見で下鶴隆央市長は、「誹謗中傷を防ぐためで文書は不当ではない」としつつ、「情報統制ととられる表現は良くない。きちんと納得してもらうための説明が欠けていた」と話した。

 感染症の心理社会的影響に詳しい関西福祉大の勝田吉彰教授は、「教育現場で口止めをするという前近代的な行為に強い疑問を持つ。感染情報を秘密にしようとすると、あいまいなままの情報がうわさやデマとして広がり、児童・生徒らの差別につながるおそれがある。口止めの行為そのものが、SNSが発達した現代において、逆に情報を広げたいという人々の気持ちを誘発する可能性すらある」と述べた。(木脇みのり、稲野慎)