オンラインで聴く震災 宮城の語り部が授業

寺島笑花
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 東日本大震災から10年になるのを前に、山口市嘉川の市立川西中学校で29日、宮城県の被災者が現地から体験を語るライブ配信授業があった。2年生61人が語り部の声に耳を傾けた。

 「(自宅に戻ってはいけないと)知っていて、分かっていても、実際にはできなかった」。草島真人さん(61)が語りかけた。

 宮城県石巻市雲雀野町の海沿いの街で暮らしていた。地震発生当時は車で市内の内陸部を走行中。家族が心配になり自宅へ戻った。だが、自宅に家族は不在で、携帯電話はつながらない。近くの小学校へ向かった後、食料や防寒具が必要だと再び自宅へ戻った。途中、同じように荷物を車に詰め込む人を何人も見かけた。

 津波ハザードマップであらかじめ確認していた自宅付近の想定は最大で30センチ程度。大したことはないだろうと思っていた。

 石巻市によると、草島さんが住む門脇・南浜地区の震災前の人口は4525人。2016年4月時点で389人が亡くなり、150人が行方不明のままだ。

 「災害が起きると、訓練とは違って正しい行動が取れなくなる」と草島さん。日ごろの備えが重要だと訴えた。

 初めて実際に被災者の話を聞いたという村田光咲(みさき)さん(14)は「自分も家族が家にいたら戻っちゃうと思うので人ごとじゃないと感じた。震災が起きたときのために家族と逃げる場所を確認したい」と話した。

 公益社団法人「3・11みらいサポート」(石巻市)の協力で、日本赤十字社宮城県支部が主催した。

 3・11みらいサポートではこれまで月に一度、石巻市の震災伝承館「南浜つなぐ館」で語り部活動を行ってきた。しかし、新型コロナの影響で来場者が減少。昨年6月から語り部の生の声をオンラインでライブ配信している。

 29日に川西中に配信されたライブ映像は、大阪や愛知、岐阜など6府県7校で同時に視聴された。3・11みらいサポートの担当者は「実際に対面するのに比べて伝わる力は半分でも、倍以上の人数に伝えられる。距離を超えてつながる何かがある。いずれ現地にも来てもらえれば」と話している。(寺島笑花)