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 大阪出身のイラストレーター、黒田征太郎さんが大阪人権博物館(リバティおおさか、大阪市浪速区)=休館=のホールに描いた壁画「絆(きずな)」が今月、取り壊された。四半世紀にわたって同館の象徴として親しまれてきた作品。惜しむ人たちが解体作業に立ち会って「かけら」を拾い集めた。「政治によって文化が壊された歴史の証し」として希望者に配布するという。

 壁画「絆」は縦約5メートル、横約23メートルで、リバティホール入り口に描かれていた。絡み合う花の茎を背景に、7人が楽しげにポーズをとっている構図で、1995年12月に同館がリニューアルした際に黒田さんが描いた。

 当時学芸員として立ち会った太田恭治さん(72)=兵庫県尼崎市=によると、黒田さんは約1週間、地元の子どもらに絵画を教えながら構想を練った。死者約6400人を出した阪神大震災の衝撃が生々しく残っていた時期だった。太田さんは「苦難や差別を超えて人々がつながってほしいという願いが込められた作品。『絆』という名前は焼き肉店でみんなで議論して決まった」と語る。

 同館は大阪市長だった橋下徹氏が展示内容を問題視したことを端緒に、無償提供されていた市有地からの立ち退きを求められ、昨年6月に休館した。建物の取り壊しは、大阪地裁で成立した和解に沿うもので、市が賃料相当の約1億9千万円を免除する代わりに、すべて解体して更地にし返還する。

 壁画の「かけら」を集めたのは太田さんら市民団体「市民で支える大阪人権博物館の会」のメンバーら約20人。当初は壁画の移設保存を検討したが、多額の費用がかかるため断念し、黒田さんの提案もあって破片をもらい受けることにした。ゴルフボールからソフトボールほどの大きさで、約60個集めたという。

 同館は2022年に別の場所での再開を目指しているが、「めどは立っていない」(同館担当者)。太田さんは「かけらは、無残に文化が破壊された大阪の禍根の歴史の語らぬ証人。コロナ禍で人権問題はあらためて重要なテーマで、リバティの歩みを風化させず、力をあわせて必ず再建するという意思を込めて希望者にもらってほしい」と話す。壁画のかけらをほしい人は太田さん(ota1.nishihama@gmail.com)まで。無料だが、指定の場所まで取りに来ることが条件。(武田肇)

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