不正論文もとに臨床研究、参加した患者に影響は?阪大

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後藤一也、杉浦奈実、瀬川茂子
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 大阪大学付属病院が、肺がん患者を対象に2015年に始めた臨床研究を、「科学的根拠がなかった」として中止することを決めた。臨床研究の根拠にしていた論文に不正があったと認定したからだ。患者らに健康影響はなかったのか。

患者に健康被害はなかったのか

 阪大と国立循環器病研究センター大阪府吹田市)は1月30日に会見を開き、所属していた野尻崇医師らによる論文2本に、存在しないデータをでっちあげる「捏造(ねつぞう)」、データを都合良く書き換える「改ざん」の研究不正があったと発表した。

 論文のうち1本は、15年に米科学アカデミー紀要に報告された。肺がんの手術の際に心臓病治療薬であるホルモン「hANP」を使うと、がんの転移や再発を防げるとしていた。

 調査委員会が調べたところ、論文で示された動物実験のデータが書き直されており、正しいデータで計算し直すと、肺がんの転移予防につながる根拠にはならなかった。

 阪大は、この論文を主な根拠にして、実際の患者でhANPの安全性や有効性を調べる臨床研究を15年に始めていた。今回の不正認定を受け、臨床研究を中止することになった。

 この臨床研究に参加した患者は10施設に300人以上、そのうちhANPの注射を約160人が受けた。根拠がない治療を受けたことで、不利益はなかったのだろうか。

 今回の会見では、これまでに臨床研究で「有害事象」が計10件あったことが明かされた。有害事象とは、脳梗塞(のうこうそく)など治療後に起きた望ましくない反応だ。

 研究が始まり、薬を注射した人が脳梗塞を発症した時は、研究参加者の募集をいったん中止した。この臨床研究の安全性を調べるために、研究にかかわらない専門家でつくる委員会が、報告を受けて検討した。肺の手術後に起こる脳梗塞について調べた論文などをもとに、脳梗塞は注射によるものではなく、がんの手術自体が原因と判断して、研究を続けていた。

 阪大はこうした一連のプロセスには問題がなかったと主張しているが、今回の不正認定を受けて、さらに臨床研究中止後も患者の経過観察を続けることにした。

 阪大病院の土岐(どき)祐一郎病院長は会見で、「患者はボランティアで臨床研究に参加する。今回のようなことが起これば、研究に対する社会全体の信頼を損なう。再発防止策を徹底していく」と話した。

 国循と阪大は、野尻医師らの論文21本について17年12月に告発があったことから調査委員会を設けた。うち5本で捏造や改ざんを認定したと昨年8月に公表。21本とは別の5論文も追加で調べ、そのうち1本が今回問題になった臨床研究の根拠になった論文だった。

 今回のように、研究不正が確…

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