息上がっても完食 パン好きの街走る 京都マラソン

吉村駿
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 神社仏閣和菓子、山道……。迷う。いつどこを走ってもよい今回の京都マラソンの公式サイトは、京都らしさを楽しめるお勧めコースを九つ紹介している。先輩記者に遅れて初ランとなった入社1年目の私は、京都初心者。お勧めから選び、距離も稼ぎたかった。

 「これなら楽しんで頑張れそう」

 選んだのは全長15.3キロの「パン消費量日本一。美味(おい)しいパン屋さんめぐりコース」。普段よく行くのは牛丼屋か定食屋で、パン屋に入ったことはまだ無かったのだ。

 消費量日本一って? 総務省家計調査で調べた。2015~17年の京都市の1世帯(2人以上)あたりのパンの消費量は都道府県庁所在市と政令指定市のなかで1位。17~19年の調査では6位だが、全国有数のパン好きの街であるのは間違いないようだ。

 京都パン協同組合理事長の山本隆英さん(74)は「京都人は新しいもの好き。海外から入ったパンにすぐに興味を持った。学生が多く、手軽なのもあるのでは」と話す。

 1月下旬の午後、寺町通のGRANDIR御池店のパンを食べてから走ることにした。店長の高田栞さん(28)お勧めの黄金メロンパンを購入。一般的なメロンパンと違い、表面が柔らかい。くせになりそうだ。

 高田さんによると、休日の朝は、ジョギング姿の若者がパンを買いに来ることもあるという。おすすめコースで店が紹介されていると伝えると「知らなかったです。とてもありがたいです。ぜひ休憩に立ち寄ってください」。すでに充実感を感じる私。

 鴨川沿いを北へ走り出した。実は、夏までは休日に走っていたコースだ。前日の雨でぬかるんだ道を、気持ち良い風を受けて進む。鴨川デルタ付近で、ギターに乗った歌声が聞こえてきた。バイクのことを歌っている。

 弾き語りをしていたのは、京都市上京区の会社員、福島祐介さん(40)。休日に週2回ほど、ここで練習しているという。主なレパートリーは尾崎豊長渕剛。さきほどの歌は尾崎豊の「15の夜」だ。通行人が聞いてくれることもあるそうで、「拍手をもらうのが気持ちいいですね。鴨川にいる人は温かい人ばかりです」。最初はギターだけのつもりだったが、歌うようにもなったという。

 歌声に乗って走り出す♪ 行く先は、ボナペティ出町柳店。1分もたたないうちに着いた。店長の吉川毅さん(44)によると、店のパンは全て焼きたて。同志社大や京都大などが近いため、学生客が多く、甘いパンが人気だという。120円の出町バターあんぱんを買った。あんこが濃厚。売れるわけだ。

 今出川通を東へ。京都大が近く、学生の姿が目立つ。百万遍の交差点から東大路通を北へ10分ほど進むと、一乗寺のラーメン街。「横綱」や「キラメキ」など、有名店の看板と匂いが五感を刺激した。福岡県出身の私としては一杯食べたくもなったが、「食べたら、ここで試合終了ですよ」という心の声が聞こえて、比叡山を横目に走り続ける。

 北山駅で先輩ランナーの紙谷あかり記者と合流した。まずは、アポを入れていた近くの「_AND Bread kitayama」へ。店長の千葉大介さん(46)が「走った後でも食べやすいように」と自慢のあんぱんを取り置いてくれていた。千葉さんによると、午前中にほとんどの商品が売り切れるという。小豆は北海道産。近くのベンチで食べた。さっぱりした甘さで、息が上がった後でも完食できた。

 ここからは2人で走った。紙谷記者はすでに累計約11キロを走っており、この日も余裕ありげ。北山通から堀川通を南下すると、左手に北警察署が見えた。いつもは取材に来る場所だが、この日は仕事で上司に呼び出されないことを祈りつつ、通り過ぎた。

 通り沿いにパン屋は少ない。代わりに、水難火難よけの神様として知られる水火天満宮でお参りして、休憩した。さらに南に進み、平安時代の陰陽師、安倍晴明をまつる晴明神社に寄った。宮司の山口琢也さん(60)によると、全国高校駅伝の際に仙台育英(宮城)の選手がお参りに来たこともあるという。「堀川通は歩道が広く走りやすい。気軽に立ち寄ってほしい」

 コースには先があったが、疲れを感じ、この日はここまでに。約2時間で走ったのは約13.5キロ。紙谷記者はさらに走り続け、この日で累計15キロになったという。自分のペースを守りつつ、おいしいパン屋の開拓のペースも上げていくつもりだ。(吉村駿)