拝啓、本当の飼い主さま 福島の被災犬みとった夫婦より

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野田佑介
写真・図版
生前のローズ。穏やかでマイペースな性格だった=藤本幸次さん提供
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 拝啓、福島の飼い主さま――。東京電力福島第一原発事故で、飼い主と離れた犬をひきとり、育てた富山の夫婦がいる。昨秋、遺骨とともに犬のふるさと福島県双葉町を訪れ、飼い主を探した。伝えたいことがあった。

 《あの子を見たのは東日本大震災から3年後の春でした。保護団体のシェルターでリードにつながれ、地面に伏せたままほとんど動かなかった。ほえることもなく、生きる気力を失っているようでした。》

 2014年4月、富山市の会社員藤本幸次さん(61)と妻美千代さん(61)は滋賀県高島市動物愛護団体のシェルターで、「ローズ」と名づけられた1匹の犬と出会った。

 団体は、福島原発事故の後、飼い主が分からなくなった犬や猫を保護していた。ローズも事故が起きた11年春、JR双葉駅近くで見つかった。雑種のメスで5~6歳くらい。オレンジがかった茶色の毛並みで体長70センチほど。首輪はしていたが、飼い主につながる手がかりはなかった。

 藤本さんは、阪神大震災や新潟・中越地震の被災地で支援物資を運ぶボランティアをしたことがあった。原発事故の後も、何かできないかと考えた。犬を飼ったことがあった。被災地で飼い主と離ればなれになった犬や猫がいると知った。車で片道2時間半かけ、滋賀まで行った。

 「保護された子が十数匹いた。一番、元気のない子には温かさが必要だと思いました」。その場でローズをひきとる手続きをした。元の飼い主に返してほしいと言われたら手放さないといけないが、しっかり面倒をみようと思った。

 《連れ帰ってもローズの様子は変わりませんでした。ゆでた鶏肉やドッグフードなど何種類も食べ物を与えましたが、ほとんど口にしない。散歩に出ても走ろうとせず、のそのそ歩いては立ち止まりました。》

 元気のない様子は2カ月ほど続いた。ある日、ローズはふとしたことから元気を取り戻した。

 夕方、近くの公園に散歩に出…

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