鹿角国体の中止決定、関係者「残念だ」

佐藤仁彦 加賀谷直人、曽田幹東
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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、秋田県鹿角市の花輪スキー場で18~21日に開かれるはずだった第76回冬季国体スキー競技会(鹿角国体)の中止が決まった。理解を示す声の一方、競技関係者や観光業者には落胆が広がった。県は宿泊予約キャンセルの損失補塡(ほてん)を検討している。

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 鹿角国体は選手ら約1800人が参加し、ジャイアントスラロームやクロスカントリーなど4種目の競技を無観客で実施する予定だった。しかし、日本スポーツ協会は1日、県と鹿角市からの中止申し入れを受け、オンラインで臨時の国体大会委員会を開いた。

 事務局は開催中止の理由として、花輪スキー場に全種目の会場が集中しており、運営上の工夫をしても、参加選手らの3密を回避するのが難しいこと、選手団の宿舎の8割ほどが相部屋で、新型コロナの感染リスクが高い点を説明。市内でコロナの患者を受け入れられる病床が2床しかなく、県内全体でも感染者が急増していることから、選手らが感染した場合の医療提供に重大な懸念が生じている、との報告もあった。

 大野敬三・大会委員長は「苦渋の決断になるが、スキー競技会については中止もやむを得ない」と各委員に呼びかけ、了承を得た。

 県庁で記者会見した佐竹敬久知事は「中止の決定はきわめて妥当なものだと思う」と述べた。県は新型コロナの警戒レベルを3に引き上げた1月18日以降、他の主催者に中止を申し入れてきた。佐竹知事は「厳しい練習を重ねてきた選手の皆さんにとっては残念なことだろう」と思いやりながらも、感染拡大の防止を優先する考えを示した。来年も同じ会場で国体スキー競技会の開催が決まっており、「なんとか来年は正常な形で行えるよう全力で努力していきたい」とも話した。

 県によると、鹿角市周辺の旅館では期間中、競技関係者の宿泊予約が延べ約1万人分あった。開催中止でそのすべてがキャンセルになれば、売り上げを期待していた飲食や宿泊関係の業者へのダメージは大きい。

 佐竹知事は「一般的に宿泊のキャンセル料は1週間前が半額。今回は2週間以上前なので半額にはならないが、あの温泉街周辺を全部押さえていたので、かなり前からの準備もある」と指摘。宿泊業者に対しては、県の責任で通常のキャンセル料よりも手厚い補償を検討していることを明かした。佐藤仁彦

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 花輪スキー場がある鹿角市では、中止はやむを得ないとする声がある一方、観光関連業者らから落胆や嘆きの声が上がった。児玉一市長は、24日から始まる予定だった全日本学生スキー選手権大会(インカレ)も、主催者の全日本学生スキー連盟と協議して中止を決めたことを明らかにした。

 「スキーと駅伝のまち」をうたう市は全国レベルのスキー大会誘致に力を入れ、大会の開催が地域経済を潤してきた。2013年の鹿角国体では、市の試算で約2億7千万円の経済波及効果があった。インカレは20年から3年連続の開催が決まっていた。

 ある市民は「コロナ禍の状況下で開催中止はやむを得ない。ただ、国体は宿泊業者や飲食店などにとって冬場の貴重な収入源だ。コロナ禍で苦境にあえぐこうした業者に追い打ちをかけることになる。市の経済への打撃が心配だ」と話す。

 国体には全国から選手、監督、役員ら約1800人が参加する予定だった。宿泊をあっせんしたかづの観光物産公社によると、大会期間中、市内や大館市小坂町の25のホテル、旅館に協力を要請。鹿角市によると、国体で約9千、インカレで約6千の宿泊がキャンセルになる。

 かづの観光物産公社の清水涼太執行役員営業部長は「宿泊業者だけではなく、食材業者、土産店も大会に備えて準備していた。宿泊関係だけでも損失は億単位になる。閉める宿もでてくるかもしれない」と話す。

 一方で医療関係者からは不安の声が上がっていた。鹿角市鹿角郡医師会は昨年12月末、「医療体制がぜい弱で万が一感染があると責任を負えない」として、国体の中止を求める要望書を市に提出。感染リスクと医療への懸念は、今回の中止決定の理由となった。

 1日に急きょ記者会見した児玉市長は「大きな影響を受ける宿泊事業者には支援が必要」とし、県と対応を協議することを明らかにした。市では来年も国体スキー大会が開かれる予定で、児玉市長は「コロナ禍であっても開催できるよう必要な準備を今から行っていきたい」と話した。

 競技関係者も複雑な思いで受け止めた。北海道の予選を勝ち抜き5人が国体に進む予定だった札幌市のクラブチームの男性コーチ(52)は「国体はインカレやインターハイと並ぶ大きな目標だったので、選手はがっかりしている」。ただ様々な大会が中止になっており、中止は想像できたといい、「残念ですけど、しょうがないですね」と語った。

 県スキー連盟の佐藤英樹会長は「試合は日頃がんばってきた成果を示す機会なので中止は残念だが、苦渋の決断だと思う」と理解を示し、来年も鹿角市で国体が計画されていることから「地元では多くの人が関わっている。来年に向かってがんばりたい」と気持ちを切り替えた。(加賀谷直人、曽田幹東)